2019年03月26日
自立意識の弱体化
家族が思っている認知症高齢者の願いや要望は、ほんとうに本人のものと一致しているのでしょうか。外山義は、問いかけます。
高齢者の心身機能が衰えていくと、まわりにいる家族がさまざまな日常生活の行為を代わりにやってあげるようになります。
逆に、高齢者のほうもまた、しだいに家族に依存していくようになります。
在宅での同居生活では、本来高齢自身がすべきことを、家族が代行したり代弁したりする場面が多くなっていくです。
こうした繰り返しのなかで家族は、自分がこの高齢者のことをもっとも理解し、助けているという思いを徐々に強くしていきます。
実は、この「思い」のなかに、介護者としての家族の「都合」や「思い込み」が少なからず混入しているということに、家族は気づいていません。
ほんとうは高齢者本人の意思に基づかなければならない問題を、家族が自分の願望の延長で話したり、本人の願いを確かめずに決めつけてしまうことが起こりやすくなるのです。
こうして生じた「ズレ」を、確かめたり、調整することは、とくに認知症高齢者の場合は容易なことではありません。
外山さんは、このような家族同居のありかたによって「高齢者が弱体化していく」と考えます。
そして高齢者本人の自立意識がしだいに弱まり、自分が何を望んでいるのか徐々に不明瞭になることの「危険性」を指摘します。
「人生最後の幕引きをどうしたいのか、最後の日々をどう過ごしたいのか。これはとても大切なことで、本来、本人の願いを中核にして決定されるべき事柄である。
一見、人間が大切にされているように見えて、じつは大切にされていない日本社会の日常が、ここにもよく見てとれるだろう」(『自宅でない在宅』p107)
harutoshura at 19:03│Comments(0)│アルツハイマー考