精神病院と違う医療施設専門病棟

2019年03月04日

「一元的」な体制

グループホームにいるねえちゃは毎晩、電話をくれますが、一昨日「どこにいるのか、何が何だかわからなくて」と落ち込んでいたかと思うと、昨晩、今夜は、そんなのどこ吹く風で、すっかり明るい声で元気です。感情の起伏が大きくなってきているな、と思います。

このブログでいまみている、日本の認知症対策のスタート地点となった痴呆性老人対策推進本部の報告(1987年)でも、「痴呆性老人」の感情面についてふれています。

すなわち、「痴呆の進行に伴い知能が低下しても、感情機能は保たれていることが多いから、恐怖感、焦操感、孤独感といった“心の痛み”を感じやすく、しかられたり、とがめられたりした場合など極度の緊張を強いられると、精神症状や問題行動を生ずることにもなる。

したがって、人間としての尊厳を保つよう、かつての生活歴や性格を踏まえながら、痴呆であるという現実を受け入れ、そのペースに合わせた受容的態度で接するなど、その介護者には他の要介護老人の場合にはみられない特別な配慮が求められる」というのです。

認知症高齢者の抱える“心の痛み”のありようについて、この時点ではまだまだ具体的に、十分、把握できていたとは思われませんが、それまでの通常の要介護老人の場合とは異なる「特別な配慮」を求めている点は評価していいでしょう。

そして「報告」では、このような「特別な配慮」が必要にもかかわらず、「介護家族は、痴呆性老人そのものや介護方法についての情報、知識が乏しいことから、戸惑い、焦り、誤解などのために対応を誤り、症状を悪化させるなど自が困難な状況を作り出している」として、国に対して「率先して、介護家族に対し老人の痴呆そのものや介護の在り方、方法等についての啓発普及に努める」ことを求めています。

さらに認知症患者の医療的処遇については、「精神科ないし一般的医療や介護を始め様々な方面からの対応が求められるが、現在のところ各般の施策は、精神保健、老人保健、老人福祉等別々の体系によって講じられており、相互の連携も必ずしも図られていない」として、国に「一元的、総合的な取組を可能とする組織体制と連携の在り方」を検討すべき、としています。

当時に比べれば、認知症に対する認識や「一元的」な体制は格段に進んできているは確かでしょうが、ここでの提言には、いまも耳を傾けなけれればならない論点が少なからず含まれているようにも思われます。


harutoshura at 21:05│Comments(0)アルツハイマー考 

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