2018年12月15日
動脈硬化原因説
さて、再びアルツハイマー病の歴史のほうに話を移します。
1967年9月、ローザンヌで「老年痴呆――臨床と治療的側面」というシンポジウムが開かれました。
ここで、ゲッティンゲン大学精神科のJ.E.マイヤーとH.ラウターが、老年痴呆の概念について解説し、ラウターは次のように要約しました。
「老年痴呆とアルツハイマー病は異なる年齢で発症する同一疾患であるという点でほかの医師たちと合意が得られた。したがって“アルツハイマー痴呆”の名称を提案する」
しかし当時はまだ、老年痴呆が、動脈硬化や血管の中膜にカルシウムが沈着して硬くなる石灰化によって起こるという“神話”が色濃く残っていました。
しかし、英国人の病理学者が、60年代に痴呆で亡くなった患者の血管を調べたところ、痴呆者と非痴呆者に同程度の動脈硬化が認められました。
また、別の病理学者のグループは、老年痴呆の脳には動脈硬化はあまり頻繁には見られなかったと報告しました。
こうして、欧米でいまだ明確な名前がないまま症例が蓄積されていた病気が、ついに“アルツハイマー病”として統合される機が熟してきたのです。
harutoshura at 21:13│Comments(0)│アルツハイマー考