マッチ箱で書く言語障害

2018年11月23日

クレペリンの記述

それでは、エミール・クレペリンは、後に「アルツハイマー病」と呼ばれることになる症例を教科書にどのように記したのでしょう。

『精神医学――学生と教師のための教科書(Psychiatrie. Ein Lehrbuch für Studierende und Ärzte)第8版』第2巻(1910年刊)の338-632ページ(Ⅵ麻痺性痴呆、Ⅶ老年性精神病と初老期精神病)の『老年性精神疾患』(伊達徹訳、みすず書房)では、「アルツハイマーの特殊群」として次のように訳されています。

「アルツハイマーは、非常に重篤な細胞変化を伴う、特殊な一群の症例を記載している。それは、非常に重篤な精神衰憊が徐々に発展してくるが、脳器質疾患の現象は漠然としているという例である。

数年のうちに精神的に退行し、記憶力が低下し、思考が貧困化し、混乱し、不明瞭となり、勝手がわからず、人物を間違え、持ち物を誰にでも与えてしまう。

後にいくらか不穏状態が発展してきて、患者は多弁となり、一人でぶつぶつ咳き、歌い、笑い、走り回り、いじりまわり、こすり、つまむといった動作を示し、不潔となる。

失象徴性および失行性障害のけはいが多く見られ、患者は要求や身振りを全く理解せず、物や絵を認知できず、まとまった行動をやれず、模倣できず、針で突かれると非常に不快に感じられるにもかかわらず、突くと脅しても全く防御反応を示さない」。

クレペリンは当時にあってこれほどまでに、というほどみごとに歴史的な記載をしたのでした。


harutoshura at 17:27│Comments(0)アルツハイマー考 

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