2019年04月02日
空間の作法
食事、睡眠、排泄といった、私たちが日常的に行っている生活行為には「手続き性」があります。
食事をするとき、手順にしたがって調理し、器に盛り、食卓に並べ、感謝し、箸で口に運び、食べ終わって余韻を楽しみます。
老齢化に伴って心身機能が低下したり、まして認知症高齢者ともなると、そうした手続き性が抜け落ちていく傾向があります。
さらに、生活している空間の貧しさが、そのまま行動の貧しさへと直結していきます。
施設で廊下の行き止まりで排尿したり、ベッドからマットを引きずりおろしたりといった“問題行動”は、その高齢者に染みついた空間感覚をもとに、馴染めない環境に対してその人なりに対応しようとしていると理解することもできそうです。
そのようなとき、空間の中の仕掛けや、かつて馴染んだ道具が、生活行為の手続き性を回復していく手掛かりとなります。
日本の伝統的な住まいには「空間の作法」という文化があります。上り框(かまち)や床の間、座敷と襖の開閉、縁側の手水、囲炉裏など、生活行為と様式的にきっちり対応した空間の仕掛けが数多く存在します。
こうした要素を高齢者の施設の公私の空間に生かしていくことで、消えてしまった行為や動作へと誘導することができるようになるのです。
無気力で消極的になってしまった認知症高齢者を、指示や命令によらずに、ある生活行為に導いていくために、こうした生活空間の仕掛けを役に立てる。
こうした発想も、グループホームにふさわしい環境づくりのうえで重要だと外山さんは考えています。
harutoshura at 23:24│Comments(0)│アルツハイマー考