グルタミン酸仮説鉄剤

2019年02月09日

NMDA受容体

ねえちゃも毎日飲んでいる「メマリー」には、きのう見たように、過剰なグルタミン酸の放出を抑えて、結果的に脳の神経細胞が死んでしまうのを防ぐ働きがあります。

メマリーの働きを考えるとき、キーになるのは「NMDA受容体」というたんぱく質です。もう30年近く前になりますが、私は、このNMDA受容体の構造が明らかになったという、次のようなニュースを書きました。

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〈記憶や学習といった脳の働きに欠かせないたんぱくの構造が分かった、と中西重忠・京大医学部教授らのグループが七日発行される英科学誌「ネイチャー」に発表した。脳卒中などの病気で、神経細胞が死ぬのを防ぐ薬の開発などへも応用できそうだ。

脳の中では一つの神経細胞から出たグルタミン酸などの物質が、別の神経細胞の表面にある受容体というたんぱくにくっついて信号がやり取りされている。グルタミン酸は記憶したり、学習で知識を積み重ねる脳の働きと深くかかわりがある一方で、蓄積されすぎれば、神経細胞を死に追い込むと考えられている。

構造がわかったのはグルタミン酸の受容体として知られている三つのうち、NMDAという受容体。ラットの脳の遺伝子の中からNMDA受容体の設計図に当たる遺伝子だけを分離。その構造をもとに受容体の構造を明らかにした。〉(『朝日新聞』1991.11.7付)

ここに記した「神経細胞が死ぬのを防ぐ薬の開発」の一つの成果がメマリーということになります。

ちなみに、中西重忠先生は、昨年ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑先生の京大での同級生。こちらもノーベル賞級の業績を上げておられる世界的な医学者です。

アルツハイマー病になって、神経細胞をつなぐシナプスのあいだにグルタミン酸が過剰に放出されると、その受け手である、このNMDA受容体も異常な活性化を起こして、過剰な働きをしてしまうことになります。

メマリーは、NMDA受容体にくっついてフタをすることにより、その機能を抑える働きをするのです。この働きによって神経細胞を守り、記憶の情報伝達を整える効果が期待できます。

こうした新しい働きをもつメマリーは、ねえちゃを含め中等度以上に進行した人向けの薬として使われるようになり、日常生活動作の改善に加えて、興奮や落ち着きのなさを抑える効果もあるとされます。

しかし、神経細胞障害を抑制はできても、障害によって死んだ細胞を生き返らせられるわけではありません。また、NMDA受容体の異常な活性化を引き起こす原因を取り除けるわけでもありません。

という意味では、残念ながら、メマリーにしても他の三つの薬同様、アルツハイマー病の進行を完全に止めたり、認知機能をもと通りにすることは期待できないのです。


harutoshura at 19:50│Comments(0)アルツハイマー病関連 

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