ロナルド・レーガンNIA

2018年12月20日

長い長いさようなら

晩年のロナルド・レーガンの頭の中に、8年間の大統領任期中の記憶はまったくなく、政治に興味を示すこともなかったそうです。訪問者に対しては丁重に応対するものの、それが誰なのかは分かっていませんでした。発する言葉の語彙も次第に減少していったといいます。

レーガンは「国民にあてた手紙」の中で「不幸なことですが、アルツハイマー病の進行に伴い、家族には重い負担がのしかかります。私は何とかして、ナンシーに辛い思いをさせたくないと思っています。(Unfortunately, as Alzheimer's disease progresses, the family often bears a heavy burden. I only wish there was some way I could spare Nancy from this painful experience.)」と記していますが、元大統領一家といえども、アルツハイマー病は決して患者本人だけのものではありませんでした。

長いさようなら

ロナルドの長女パティ・デイヴィスは、父に捧げる手記『長い長いさようなら』の中で、次のように述べています。

〈アルツハイマーのような病の場合、荒野をさまよっているのは身近な友人や家族、つまりその病の実態を目の当たりにして悲嘆にくれる者たちのほうだ。患者があらぬ世界に迷いこんでしまい、もはやそのあとを追うことができないと思い知らされると、荒野におきざりにされ、あてもなくさまよう気分にさせられる。

そして山腹からはね返ってくるこだまにほっとして足をとめ、耳をすます。それはただのこだま。そのこだまもしだいにやんでしまうと、さらに注意深く耳をそばだてる。
「そういえばこんなことがあったわね……」
そんな言い方を母はよくするようになった。

そうやって思い出にせっせと命を吹きこもうとするのは、父がいつも腰かけていた椅子に腰かけたり、廊下を歩いたり、窓の外に目をやるといった何気ない行為が、ともすればそこにぽっかりあいた穴をいやでも気づかせてしまうから、だから過去の情景や、そのときかわされた会話の断片をせっせとよみがえらせては、そうした思い出を手放すまいとし、ホコリをはらいのけ、いつまでも鮮やかであれと願うのだ。〉


harutoshura at 19:37│Comments(0)アルツハイマー考 

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