死にいたらない病アルツハイマー化

2018年12月09日

70歳の患者

アルツハイマーが亡くなってから20年以上経った1936年8月、フランクフルトで開かれたドイツ神経精神医学会で、ピットリッヒという医師がアルツハイマー病と診断した70歳の患者=写真、コンラート&ウルリケ・マウラー『アルツハイマー』から=について紹介しました。

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*『アルツハイマー』p.319

患者は、絶え間なく動き、両手で顔をぬぐい、髪の毛を後ろに撫で付け、手を擦り合わせ、大腿に沿って撫で、右手で左の手の平を摘もうとする。こういう動作を単調に繰り返しました。ピットリッヒはこうした奇妙な態度を「常同的反復作業せん妄」と名付けました。そして講演では、次のように述べたといいます。

「下唇を前に突き出し、上唇を噛み締め、舌を突き出し、口を左右にキッと締めています。口唇に触れた指を吸う、いわゆる吸引反射が認められました。パイプ用のタンパー(吸っている際に熱で盛り上がってくるタバコの葉を押さえる道具)、タバコ、マッチが、患者が座っているテーブルの上に置かれ、パイプは手に握らされました。彼はパイプを分解しようとし、それからタンパーとパイプを一緒に押しやりました。

蝋燭は彼の右手に握らされ、燭台とマッチが机の上に置かれました。彼は蝋燭をテーブルの上に置き、燭台の首をねじろうとし、何本かのマッチを取り出して親指と人差し指の間にきちんと並べました。マッチを擦る仕草をしましたが、摩擦面ではない側面でした。その後、マッチをフォークのように口に押し込み、あたかも何かを拾い上げるかのようにそれで机の上をぬぐい取り、再び前かがみになりマッチを口まで持っていきました。

次に彼は蝋燭を手に持ち、蝋燭の先端にしゃぶりつきました。彼はナプキンリングを飲物用に使いました。明らかに対象物を認識しておらず、その意味も分からない、精神盲の状態でした」

この発表の際、患者の主だった動きとその障害を示す映像が示されました。また、脳組織の顕微鏡検査では、アルツハイマー原線維変化や多数の老人斑。脳には高度の委縮が認められ、脳重は1100グラムしかなかったそうです。

ここで注目すべきなのは、ピットリッヒが、初老期までではない70歳の老年痴呆の患者に対して「アルツハイマー病」と診断したということです。このように、病名の統一に向かって歴史は少しずつ動き出していったようです。


harutoshura at 20:39│Comments(0)アルツハイマー病関連 

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