特異な臨床像標本

2018年11月09日

確認ができたこと

アルツハイマーによる1906年11月の学会発表のつづきです。発表の中で彼は、アウグステの症例について次のようなことが確認ができたとしています。

①記憶力は最も強く障害され、物品呼称はだいたい正確だが、直後に、すべての名前を忘れてしまう。

②文章は、一行一行、一字ずつ区切って読み、アクセントは意味をなさない。個々の音節を何度も繰り返し書き、すぐに消してしまう。

③会話中にしばしば沈黙し、コップの代わりにミルク壷と言うように、錯誤的な表現を用いる。ある種の質問は明らかに理解できない模様。

④物品使用は困難。歩行に支障はなく、手も上手に使え、膝蓋腱反射(膝頭の真下をたたいたとき、足が前方にはね上がる反射)は正常、瞳孔反射も正常だった。脈をとるときに触れる橈骨動脈はやや硬化性で、心濁音界の拡大や蛋白尿はなし。

⑤失語、失読、失書、失算、失行、失認など、脳の一部の機能が失われることによって現れる「巣症状」が、時に強く、時に弱く出現。痴呆は常に進行し、最後には無欲状になり、下肢屈曲肢位でベッドに横たわり、失禁、褥瘡(床ずれ)を生じた。


harutoshura at 15:13│Comments(0)アルツハイマー考 

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