Aokijima

認知症と生きる「ねえちゃ」の近況と、アルツハイマー病に関する記録です

2017年04月

妄想

「けさ、ねえさまから電話がかかってきて、むかしの近所の話をいろいろした」と、夕食のとき、ねえちゃがいいます。

着信記録を見ると、4月にかかってきたのは、息子からのほかは新聞店からかかって来た1件があるだけです。

最近はかかってきても、その用件どころか、電話があったこと自体も頭の中に入らずに消えてしまうので、近しい人たちも気を遣って電話をひかえてくれているようなところもあります。

実際には電話がないのに、「**さんから電話がかかってきて、**した」といった話をよくするようになりました。一種の妄想なのでしょう。

姉からの電話というのも、どうも、ずいぶん前にねえちゃのほうから電話したときの話が時間と場をとび越えて「きょうの出来事」になってしまったようです。

食欲だけは旺盛ですが、やりたいことは何もないといいます。84歳でデンマークへ渡ったというテレビのドキュメントを見ながら、「どうせ妄想するのなら、こういった大きな夢物語にしたら」と、つい口にしました。

買いもの

「きょうは、ししゃもを焼いて、ゆでだこ、それに冷凍まぐろの切り落としもあるから、夕食はなんにもしないで大丈夫」と昼過ぎ、ねえちゃに念を押しておきました。

ところが、夕方、何かを思いついたかのように布団から起き上がって、徘徊に出かけました。おまけに、スーパーに寄って5300円余りの食料品を買い込んで来ました。

自分のお金で欲しいものを買って来る、のではありますが、いつものように大半は、冷蔵庫の中にすでにあるものです。

たこは、すでに冷蔵庫の中に三パックあるのに、また買って来ました。バナナも二房あるのに、また二房。冷凍室には、まぐろの切り落としが三袋あるのに、また買って来た、というありさま。

家にないから買って来るのではなく、何が何だかぜんぜん状況判断ができずに、なんとなく買ってきてしまうのです。

食べたいものがあるから買いに行くんだったらいいけれど、家にあるものを次々新たに買いこんでくるだけなので、冷蔵庫に入りきらなくなって捨てるものが増えていくだけです。

いつものように「そんなに無駄づかいばかりしていると、施設に入るお金なんて残らなくなるよ」と諭しても、「はい、はい」とうなずくだけ。ポカンとしています。

山菜採り

きょうの夜、ねえちゃの家へどなたかが訪ねて来られました。

「どなた」と、ねえちゃに聞くと、「デイサービスでいっしょのの人」といいます。

「用件は?」と聞くと、「ふきのとうをいっしょに採りにいかないかって。あした何か予定があったけ」と、いいます。

「名前は何ていうひと?」と聞くと、「わからない」。「男の人なの、女の人なの?」と聞くと、「男の人」。

いろいろ聞いていくと、どうも、この間から再三、ふきのとうなどを届けてくれている男性のようです。

「どこへ採りに行くの?」。「どっか知らないけど、その辺」。

「ちょっと待って! 一人でも徘徊して帰って来れなくなることがあるのに、名前も忘れた、どこの家かも知らない人と山菜採りに行って、帰れなくなったらどうするの!」

というわけで、せっかくのおさそいでしたが、お断りすることにしました。

椿

眠っていないとき、ねえちゃは、窓から外をぽかんと眺めていることがよくあります。

庭らしい庭があるわけではありませんが、今年はチューリップに加えて、鉢植えの椿が十個ほど、赤い花を咲かせました。

「去年もおととしも咲かなかったので、うれしくて、うれしくて」と珍しく豊かな表情を浮かべています。

椿の名の由来は、厚みのある葉の意味で「あつば木」、つややかな葉の「艶葉木(つやばき)」、光沢のある葉の「光沢木(つやき)」などいろんな説があるそうです。

むかしむかし、八百歳の長寿を保ったという、若狭の八百比丘尼という人が、ツバキの枝を持って全国各地を巡り、雪国にも広めたのだとか。

椿というと、有名な河東碧梧桐の「赤い椿白い椿と落ちにけり」、飯田蛇笏の「御嶽の雲に真つ赤なおそ椿」などの句を思い出します。

高遠の桜

ねえちゃは、いままで観たなかでいちばんきれいだった桜は「高遠の桜」だとよくいいます。

郷里に近い伊那市高遠町の城址公園にある、タカトオコヒガンザクラです。

いまが満開、公園全体を美しい薄紅色に染める様子が、長野へ帰ると県内ニュースで盛んに流れていました。

かつて高遠藩の馬場にあった桜は、シーズンには花に隠れて馬の姿が見えなくなるほどだったそうです。

明治8(1875)年、荒れたままになっていた高遠城址を何とかしようと、旧藩士たちが馬場の桜を城址に植え替えたのが、公園の桜の始まりだったとか。

タカトオコヒガンザクラは、ソメイヨシノより少し小ぶりで赤みがある独特の味わいが感じられます。園内には約1500本もの桜の木があり、全国の「さくら名所100選」にも選ばれているそうです。

松井潤
matsuijunta@gmail.com
  • ライブドアブログ