Aokijima

認知症と生きる「ねえちゃ」の近況と、アルツハイマー病に関する記録です

2017年03月

ふきのとう

きょうの朝、高齢の男の人が、ねえちゃの家を訪ねて来ました。「だれが来たの」と聞くと、「デーサービスでいっしょだった人」といいます。

持ってきてくれた袋には、いまごろ、いっせいに芽を吹き出すふきのとうが入っています。庭かどこかで、摘んだばかりのようです。

「何ていう人なの?」と聞いても、「知らない」といいます。「じゃあ、どこに住んでいるの?」

「う~ん、と、あっちのほう」「あっちって、どっち」「あの道、ちょっと行ったところの」。それとなく手を差し出しますが、なんだかよく分かりません。

センターへの送り迎えのときに、よくいっしょの車に乗る人で、乗り降りするところはだいたい見当がつくものの、どこの家からははっきりしないようです。

「お礼を言ったりしなきゃだから、名前とどこの人かくらい、今度行ったときにちゃんと確かめて来なけりゃだめだよ」

水曜日

きょうは、ねえちゃのデイサービスの日。お嫁さんに電話で起こしてもらって、いつものように出かけました。

最近、家ではお風呂に入りたがらなくなってきていますが、センターで「入浴拒否なく、スムーズに入れて」いるそうです。

いつもは、覚えているのはお風呂へ入ったことくらいですが、だいぶ慣れて来て、きょうは6人のグループでいろいろ話したり、歌をうたったりしたことも記憶に残っているそうです。

鰤の照焼き、うの花の炒め、花野菜のサラダ、ホットケーキなど、いろいろ食べたはずですが、そっちのほうはぜんぜん覚えていません。

でも、センターでやった加減乗除の計算問題は、満点でした。デイサービスは1週間の真ん中の水曜日。最近、ねえちゃの生活は「水曜日」を中心に回っていくようになってきました。

雪崩

栃木県の那須温泉ファミリースキー場付近で雪崩が発生し、高校生7人と顧問の教員1人の8人が亡くなりました。

県高体連が開いた春山安全登山講習会に参加していたそうです。「安全登山」のための講習が、大惨事になってしまったわけです。

那須町では27日未明に雪が降り始め、午前中には積雪が30センチを超えていたとか。雪が一気に降ったことによって、表層雪崩が発生した可能性が高そうです。

積雪のため予定していた登山を取りやめ、雪をかき分けながら歩くラッセルの練習に切り替えていたところで、雪崩に巻き込まれたそうです。

雪崩を予測するのは極めて困難です。とはいえ、危険を覚悟した登山の最中ならともかく、あくまで
も講習中のできごとです。

予定していた登山が出来ないほど天候が悪化していたのに、あえてラッセル練習をする必要があったのか。疑問です。

山暮らしが長かったねえちゃも眼に涙を浮かべて、めずらしくテレビのニュースを注視していました。
 

新聞代の引き落とし

きょうの午前中、ねえちゃと八十二銀行へ行って新聞代の振替の手続きをしてきました。

これで、公共料金をはじめ、宅食代、生協など、定期的に支払うお金はすべて、銀行からの引き落としにしました。

キャッシュで払うものといったら、区会費や美容院の料金などごく限られたものだけになります。

ふつうに暮らしていくうえで、お金のやり取りをする仕方を忘れると困るので、これまでいくつか現金取引の余地を残してきました。

でも、玄関へ来て請求されれば言われるままに何でも払ってしまい、どこへ、何の料金の、いつの分のお金を払ったのか、すぐに忘れてしまいます。

しかも、物忘れは急速な勢いで進んでいます。さすがに、このままではどうにもならないな、ということになりました。

原則として、すべてが銀行から引き落とされる。だから、誰かが来てお金を請求されても、言われるままに払うようなことはしないこと。

だからといって、財布にお金がまだあるからといい気になって無駄遣いしないように気をつけること。現金を使わないだけで、ねえちゃの銀行口座からは確実にお金が減っていくのだから。

どこまで頭に入ったかはわかりませんが、とにかく、そういうことでやっていくことになりました。
 

千秋楽

大相撲春場所の千秋楽、左肩の負傷をおして強行出場した稀勢の里が、本割、優勝決定戦と続けて照ノ富士を破り、奇跡的な逆転優勝を果たしました。

テレビ観戦の私を含めてみんなが感動して、大騒ぎになっているのに、ねえちゃはいっこうに興味を示してくれません。

「こんな大一番、めったにないからこっちへ来て観たら」と言っても、血圧を測って折れ線グラフを書くことに専念しています。

長野県の星、小結御嶽海も三役2場所目を9勝6敗の好成績で終えたというのに……。

認知症になったため、なのかなと考えて見ると、そういえば以前から、ねえちゃが何かを観て我を忘れて興奮しているような姿を目にした覚えがないことに気が付きます。

最近は、楽しみだったはずの風呂へも入りたがらないようになってきました。楽しみも、感動もない人生の寂しさが、気にかかります。
 
松井潤
matsuijunta@gmail.com
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