Aokijima

「認知症」と「ねえちゃ」に関する覚書です

2016年12月

ねえちゃの家の床には、あちこち、小さな穴が開いていたり傷がついたりしています。

壁や扉にもへこんだリしたところが、ところどころにあります。それらのほとんどは、私がつけたものです。

ねえちゃが、言うことを聞いてくれなかったり、わけのわからない行動に出るとアタマにきて、茶碗や菓子箱、電話機などいろんなものを投げつけてしまった、その痕跡です。

ねえちゃは、いまあったことや言ったことを次の瞬間には忘れてしまいます。冠婚葬祭や病院の予約など、直前になって勝手にキャンセルしてしまうのは当たり前。

一晩に2日分、3日分の薬を飲んだうえ、おまけに関係のない私の薬まで飲んでしまうこともあります。

そんなことがあると気が短い私はつい大声を張り上げて怒ったり、ものを投げたりしてしまうのです。 ねえちゃは、それが怖くなって真夜中にお嫁さんにSOSの電話をかけることもありました。

最近は「こんなんなら死んだほうがまし。でも殺してくれと頼んだら、お前が牢屋に入らなきゃならなくなるし」と、ときどき口に出すこともあります。

今年は、ねえちゃの認知症が急激に進んだ年となりました。一方で、専門医やケアマネージャーに相談に乗ってもらって、「これから」への模索を始めた年でもありました。

ねえちゃとずっと対峙してきた私には、人間というものについて、生きるということについて、あらためて考えさせられる年でもあったと思います。

それから、このごろは少し忍耐強くなってきたかな、とも。そういう意味では、ねえちゃのおかげで本当に勉強になった1年だったな、と感じています。

早く日が暮れてしまうせいもあるのですが、最近、午後6時過ぎにねえちゃの家に行くと、ドアチェーンが掛けられていて入れてもらえなくなることがしばしばあります。

ねえちゃが寝込んでいたりすると、合鍵を持っていてもチェーンで締め出されて、「開けてくれ」と大声で叫ばざる得なくなるのです。

訪れることを直前に知らせておけば、以前は必ず玄関に明りを灯して待っていてくれていたのですが。最近は、それを望むのも、難しくなってきたようです。

会うときまって、「オレはだれだか分かるかい?」と聞くのが、最近は挨拶の代わりになってきました。

以前は笑いごとのように受け止めていましたが、最近は「いまんところわかるけど……」と不安げに頭をかしげるようになってきました。

そんなとき、症状がどんどん進んでいるんだな、しみじみ寂しさがわいてきます。

「正月くらいは賑やかやろう」と以前はいろいろと考えていました。でも、最近は「年末年始くらいは徘徊したりしないで静かにしてて」とついつい本音を漏らしてしまいます。

きのうの夜、ねえちゃから「明日の朝7時に起こしてくれ」と電話がありました。

理由を聞くと、近所の人と今年最後の美容院に行こうと午前7:45に約束をしたのだそうです。

私は完全に夜型なので、朝7時に起きるのは不可能です。しかたがないので、残っていた仕事を片付けるついでに朝まで起きていることにしました。

朝、電話をかけて起こすと最初は何が何だか分からなかったようですが、話しているうちにようやく美容院のことを思い出しました。

夜、「美容院はどうだった?」と聞くと、また何が何だかわからない、といいます。

しかたないので「鏡を見てみて」というと「髪がない。ない」と大きな声で返ってきました。

美容院へ行ったことが、やっと少し分かったようです。

きょうは、ねえちゃのデイケアセンター通いの今年の最終日です。

いつものようにお嫁さんに電話で励まされて、パジャマを着替えて、何とか出かけました。

センターで何をやったかは「まったく覚えていない」そうですが、行ったことはかろうじて頭に残っているようです。

ねえちゃも、これでいちおう「仕事納め」となりました。

ただし、もう郵送や払い込みが済んでいる「市田柿」について、何をまた勘違いしたのか、「困っちゃった。連絡して代金を振り込まなけりゃ」と、まったく関係のないめいのところまた電話をすると言っています。

何がなんだか分からない電話を何回もしまくることが、最近はもう当たり前になってきましたが、みんなが成れているわけではありません。

「いくら長年い付き合いのある親戚にでも訳のわからないこと言ってったら愛想を尽かされちゃうから、年末年始くらいは騒がず静かにしてて」と、いつもの愚痴をまた言ってしまいました。

きょう東京へ帰らなければならなくなった私は、残りものをかき集めて、お昼に焼うどんと茸ソースのパスタを作りました。

ねえちゃは肉が嫌いなので、「パスタなら肉入ってないけど食う?」というと、食べると言います。

私が作ったのでうまくはないのに決まっているのですが、歳をとって味覚も衰えてきたのか、「おいしい」「おいしい」と涙を浮かべながら食べています。

むかしは料理作りが自慢だったねえちゃ。でも、いまでは作るすべを忘れてしまったのか、気力も湧いてこなくなっってしまったのか、すっかり料理ができなくなってしまいました。

そういうのがなんとももどかしい、というのもあるのか、最近ずいぶん涙もろくなって来たなと感じます。

ねえちゃが、おいの家のお嫁さんの実家に注文していた干し柿が届きました。

市田柿の名は、長野県下伊那郡の旧市田村で盛んに栽培されていたことに由来します。飯田・下伊那地方の優良系統を選んで栽培し、商品化が進められてきた、日本最大の生産量を誇る干し柿です。

比較的小ぶりなのが特徴といわれていますが、幅広の紡錘形をしていて、食べごたえがありそうです。

市田地方で柿の栽培が始まったのは、江戸時代、伊勢神宮参拝で柿栽培が盛んだった美濃からもたらされのがきっかけという説が有力だそうです。

当時は焼柿とよばれ、囲炉裏端で焼いて渋を抜いて食べられていたようですが、しだいに家の軒先などに吊るして乾燥させるようになりました。

飯田・下伊那地方では、元旦に食べた干し柿から出てきた種の数が多いほど、たくさんのお金を蓄えることができる、という言い伝えがあるとか。さて、来年はどうでしょう。

ねえちゃは、おいの関係ではなく、めいから送られてきたと勘違いしてしまうというちょっとしたアクシデントはありましたが、料金の振り込みも終了。さっそく頬張りはじめました。
 

最終的にねえちゃは、親戚や友人あての、パソコンで印刷した16枚の年賀はがきを、きのうポストに無事投函しました。

投函した年賀状のあて先は、日ごろメモをしたり領収書を貼りつけたりしている大学ノートに書き込みました。

20枚買っておいたので、残りは4枚。うち1枚は、喪中のお知らせが来ているのを忘れていて印刷してしまったので余りは3枚です。

出していない人から送られて来た場合に備えて、3枚では心もとないので予備に、ねえちゃが気に入ったイラストの入った5枚入りの年賀はがきセットをスーパーで買ってきました。

「元日になったら、ノートと照合して、送っていない人の宛先を書いてポストに投函すればいいから」と話してはおきましたが、いまのねえちゃには、誰かの手助けがないと到底できない作業です。
 

入れ歯が外れやすくて具合が悪くなった、とねえちゃがいうので、予約を取ってかかりつけの歯医者さんへ連れて行きました。しばしば、予約しては直前キャンセルを繰り返しているところです。

予約した時間通り、すぐに入れ歯の調整から歯垢落としまでていねいにやってくれたのですが、診療が終わってから清算までに多少時間がかかりました。

気にするほどの時間ではないと思うのですが、「いつまで待たされるんだろう」「何やってるんだろう」とブツブツ。ねえちゃは気が気ではありません。以前の忍耐強いねえちゃからは、考えられないことです。

「これといってやらなければならないことがあるわけじゃないのに、何をそんなに急いでいるの」と聞いても、わけのわからないことを言っています。

世の中クリスマスだから、とスーパーへ寄って、チキンやエビやらちょっぴりいつもと違うものを買っ帰っても、そんなことはトンと意に介さず、ねえちゃは冷蔵庫の中からあり合わせを取り出して、いつもの夕食です。

私がテレビを見ているあいだに、さっさと片付けて午後7時前にはもうパジャマに着替えています。「バカになっちゃった」と気にし出すと、頭の中がいつも切羽詰まったような状況に追い込まれてしまうのでしょうか。

認知症が進むにつれて、「のんびり構えてドンと生きてけばいいじゃない」といった余裕が、どんどんなくなっていくようにも感じます。

きょうは、ねえちゃの年賀状作りです。

長野県「雷鳥くんの初日の出」、という絵が右下に入った年賀ハガキに、「恭賀新年」と繭玉のイラストをくっつけて印刷しました。

今年買ったのは20枚だけですが、困ったのは、どこへ送るのか、ちんぷんかんぷんで、ねえちゃはとんと決めようとしません。

もう2週間も前から、だれに出すか決めといてと言っているのですが、これまでに来た年賀状をパラパラめ繰り返しているだけです。

年賀状というものがどういうものだったのか、頭の中から消え去りつつあるようにも思えます。

あの人はどう、この人はどうする、と私のほうで指定してなんとか出す人を決めて、とりあえず16枚、印刷しました。

ひょっとするとねえちゃの年賀状を出すのも、これが最後になるかもしれないな、とちょっぴり寂しい感じもしています。

きのうデイサービスセンターから持ち帰ったものをみんな見せて、というと、その中にクリアケースに入った連絡用とみられるカードが入っていました。

これが、ねえちゃがしばしば「ない、ない」と言っていた「連絡帳」のようです。

「昼食」には、鯖の照焼き、里芋の煮物、ブロッコリーの辛子マヨなど。

「訓練・レクリエーション」には、ストレッチ体操、脳活体操、塗り絵、般若心経の写し、屋外歩行トレ(240M)などなど、やったことが細かく記入されています。

ずいぶんいろんな活動をやっているんだな、と驚かされるほどです。

ねえちゃはそれらのほとんどを忘れてしまっていますが、ただ、テーブルを囲んで4、5人の人たちと話をした記憶は残っている、といいます。

きょうはデイサービスの日。ねえちゃは、このあいだ甥たちが届けてくれたゆずを3個持って出かけました。

「センターのお風呂で使ってもらえれば」と思ったのでしょう。ちょうど、きょうは1年で昼の時間が最も短い冬至でした。

冬至の日にゆず湯に浸かると「風邪をひかない」ともいわれ、江戸時代からつづく風習になっているのだそうです。

今冬は特に、インフルエンザや風邪が流行っている様子です。まさに、ぴったりのタイミングでした。

持っていったゆずは、さっそくセンターのお風呂に浮かべてもらったそうで、ねえちゃも大満足です。

相変わらず帰って来るとたいていのことは忘れてしまいますが、通うのにもだいぶ慣れて、こうした心遣いをする余裕も出てきました。

喜ばしい、一歩前進です。

あしたはデイサービスの日。ねえちゃから「連絡帳どこへ行ったろう?」と、突然、電話がありました。

「そんなこと、わからないよ!」。

デイセンターと家族とのあいだの連絡のため、それらしきモノがあるようではあるのですが、私はまだねえちゃから見せてもらったことがありません。

デイサービスから帰って来たときに毎回、「連絡帳は?」と聞いてみても、そのようなものがあるのかないのか、持ち帰るのを忘れたのかどうなのか、はっきりしたことを覚えていないといいます。

けっきょく、できるだけ探してみて、無いようならあした担当の人に聞いてみる、ということにしました。

が、あしたになれば、それを探していたこともまたきっと忘れているのでしょう。

大河ドラマ「真田丸」も、とうとう最終回の放送が終了しました。思ったよりアッサリ系の最後だったな、という感じがしています。

真田氏ゆかりの上田市では、パブリックビューイングがあって、詰め掛けた人たちが「赤備え」の甲冑にちなんだ赤い衣類などを身に着けて最終回を見届けたそうです。

また、主人公の信繁(幸村)がモデルのご当地キャラクター「真田幸丸」と、来年の大河「おんな城主直虎」の主人公、井伊直虎の生まれ変わり、という浜松市のキャラクター「出世法師直虎ちゃん」が交流するイベントもあったとか。

信繁の兄、真田信之の所領は上田から松代へと移りましたが、松代はねえちゃの家の近くにあります。今年は、そんな松代でもいろんなイベントが開かれて賑わいを見せました。

近くが舞台になっているんだから話題の「真田丸」くらいは毎週見るようにしたらと、ねえちゃには何度も言ってきましたが、とうとう、どういう時代劇なのかチンプンカンプンのまま1年が過ぎてしまったようです。

バスタ新宿が出来て、新宿の渋滞がひどくなったという報道もあるようですが、JR新宿駅南口と直結して乗換はずいぶんスムーズになりました。

それから、ねえちゃの家がバス停に比較的近いので、最近長野へ行くのにはほとんど高速バスを利用しています。

バスといえば、軽井沢町でスキーツアーの大学生ら15人が死亡したバス事故から間もなく1年になります。

そのためか、今季、県内外のスキー場をツアーバスで訪れる人はかなり減っているそうです。

ツアーバスの安全性について利用者側の不安感が払拭されないため、新幹線やマイカーに流れているという見方もあるようです。

いずれにしても、雪が降ったり道路が凍結することが多くなり、いよいよ雪道の峠越がしんどい季節に入ってきました。

3年ほど前、ねえちゃがMRI検査をした結果について、先生から「血管はきれいに映ってますよ」と言われたことがあります。

認知症には、アルツハイマー型のほかに脳血管性のものがあります。

ねえちゃはむかしから血圧が高く、高血圧の薬をずっと飲んでいたので、当時、認知症だとすれば脳血管性かなと思っていた私は、ホッとした覚えがあります。

でも、アルツハイマー型の場合でも、高血圧症が関係している可能性があると最近は考えられるようになってきました。

米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究者らによると、生活習慣の九つの要因がアルツハイマー病に寄与している可能性があるとか。

九つの要因とは高血圧のほかに、肥満、頸動脈疾患、うつ病、脆弱性、教育水準の低さ、ホモシステイン値の高さ、喫煙、糖尿病で、大規模な統計解析によって世界のアルツハイマー病の3分の2にこれらの因子が関連していることが分かったそうです。

とともに、かつては全く違うと考えられていたかつて脳血管性とアルツハイマー型ですが、最近は「混合型」の認知症というとらえ方がされることもあるそうです。

そこらへんについても、今後はもう少しきちんと勉強してみたいものだと思っています。 

ねえちゃのカレンダーを見ると、12月18日(日)のところに、「デイサービス10:00**さん」と赤いマジックで書いてあります。

「これ何なの」と聞いてみると、「何だかよくわからない」といいます。「自分で書いたんでしょ!」「ん~ん。そうなんだけれど」。

日曜日は、デイサービスは休みだし、ケアアドバイザーの人が来るというのもヘンです。担当者の人に電話をしても、そのような予定はないといいます。

一方、12月26日のところには、「薬をもらいにお医者さんへ行く」とこちらも、赤いマジックで書き込んであります。

昨日いっしょにお医者さんのところへ行って、来月までの薬をもらってきたばかり。

「きのう行ってきたばかりなのに、これ何なの!」とやや厳しく聞いても、「何が何だか? 書いたかどうかも覚えていない」とねえちゃはいいます。

単なる書き間違えなのか。それとも、夢で出てきたことか何かが気にかかって書き込んだのか。いったい、どういうことなのか? 不思議です。

きょうは、ちょっぴり寒かったけれど、雪のアルプスがすっきり見渡せるいい天気になりました。

こんないい天気なんだからと、ねえちゃを連れて散歩がてら脳神経外科に行きました。

薬を処方してもらうのは、今年はこれが最後になります。

「アタマのほうは、進行していかざるを得ないでしょうが、冬のわりには血圧は安定していますね」と先生は言っていました。

近くのスーパーで、週末用の食料品を調達して、近道を探りながら、家までテクテク帰りました。

「テクシーだと、タクシー代の分、食べ物が買えるからもうけもの」と、ねえちゃはご機嫌でした。

きょうは、デイサービスセンターの日です。ようやく、だいぶ慣れて来たのか、ねえちゃはダダをこねることもなく、無事に出かけました。

センターでは、いつものようにお風呂に入り昼食を食べて、アタマや体のトレーニングをしたようです。顔見知りの人も少しずつ出てきたとか。

きょうやったというプリントのなかに、百ます計算がありました。

百ます計算は、縦10×横10のますの左と上にそれぞれ0から9の数字がランダムに並べられていて、それらの交差するところに足し算や引き算など指定された計算方法の答えを記入する計算トレーニングです。

小学校の教師をしていた陰山英男さんが、小学生の基礎学力向上のために利用して成果をあげて普及したため、「陰山メソッド」として話題になったこともあります。

小学生の学力向上のための取り組みが、認知症のためのトレーニングにもなっているのはちょっとした驚きです。ねえちゃの成績は、なかなかいいようです。

ねえちゃのきょうの仕事は、お歳暮を選んで送ることでした。

お歳暮には、毎年、数の子を送るのが常でした。

今年もそうするつもりで近くのお店へ行ってみましたが、店員はみんなサンタクロース姿で、お歳暮ムードはもうありません。

「お歳暮で数の子を送りたいのですが」と店員に聞くと、「今年は品薄で、ここにある一つしかありません」といいます。

別の店に行くと、こちらはたくさん並んでいましたが、「生の食品の発送はもうやっていません」の返事。

しかたがないので、「お歳暮人気ナンバーワン」だという缶ビールにすることに。宅配の手続きをして、なんとか完了となりました。

出足の遅れが少々ひびきましたが、店を巡って、ねえちゃは久しぶりにたくさん歩きました。
 

アタマが思い通りにならなくなったねえちゃにとって、生きていくためのお金をどうやって管理していくかが、大きな悩みになっています。

5年前に夫が死んだとき、農協などの他の金融機関に預けていたお金はすべて清算して、八十二銀行とゆうちょだけにまとめました。

それでも、郵便局から「定期」の書きかえのお知らせのハガキとかが来ると、何が何だかわからなくてトラブッてしまいます。

それじゃいっしょに、明日にでも郵便局へ行って書きかえの手続きをしようか言っていたら、きょう、ちょうど郵便局の担当者が家に来てくれました。

いまの状況を考えて変更することにして、払戻請求書などにハンコを押しました。手続きのため通帳などを預けるついでに、年賀はがきも20枚たのみました。
 

年の瀬も間近になって、やることのないねえちゃもさすがに、差し迫ってやらなければならないことがいくつも出て来ています。

まずはお歳暮。毎年、親せきを中心に何軒かへおくっているのですが、どこへ送っていたのか、ねえちゃの記憶にはほとんど残っていません。

住所はこっちで調べるから、どこへ送るかだけでも、いつものノートに書きだしておいて、といってもぜんぜんその気になってくれません。

それから年賀状。今年来たのは、どこかにしまい忘れてしまいました。とりあえず、何枚買うのと聞いても、「10枚かな20枚かな……」。

「お歳暮も、年賀状も、今度がもう最後になるかな」と、少々弱気な言葉も飛び出しました。

きのう、おいたちからもらったユズをねえちゃはさっそくお風呂に浮かべて、柚子湯に浸かりました。

おいたちが来たことすらすぐに忘れていたのですが、せっかくユズがあるのだからお風呂に、といったあたりは不思議に忘れません。

「ゆず湯に入れば風邪を引かない」とよく言われますが、日本では江戸時代から冬至にユズを浮かべて入浴する習慣があったそうです。

実際、柚子湯には血液の流れを良くする血行促進効果があって、風邪の予防だけでなく、冷え性や神経痛、腰痛などにも効くとか。

また、ひびやあかぎれを治したり、湯冷めを防ぐ効果もあるそうです。

ほんとうは輪切りにして入れたほうがいいようですが、とりあえず5個ほど、丸いまんまお風呂に浮かんでいます。

確かにじわっと温まってきて、快適です。

きょうは、ねえちゃの60代のおい2人が、採りたてのユズをたくさん持って訪ねてくれました。

お昼にはお寿司の出前を頼んで、最近の郷里の様子や昔の実家のことなど、2時間半ほどひっきりなしに話をしました。

1分前のことでもみんな忘れてしまうねえちゃですが、母親が死んだときの模様など、昔のことは驚くほどよく覚えていて、いま見てきたばかりのようにしゃべりまくります。

ふだん、しゃべりたくても、しゃべる相手がいないことが多いので、久々に大満足だったようです。

けれど、夜になって「きょうだれが来たの」と聞いても、記憶からすっかり消え去ってしまったようで、ぜんぜん覚えていません。

おまけに私が居るのも忘れてしまっていて、早々と一人で夕ごはんを食べてしまったといっています。

きょうの夜、テレビで、水田でジャンボタニシが稲の苗を食べ荒して大きな被害が出ている、という番組をやっていました。

「そうそう、タニシ、子どものころ取って来てよく食べた」と、ねえちゃは珍しく身を乗り出して、懐かしそうにテレビを覗き込んでいました。

タニシは、淡水に棲息する、数cmの黒っぽく見える巻貝。水田、用水路、池などに広く分布しています。

リンゴの大きさくらいにもなるというジャンボタニシは、スクミリンゴガイをいい、正確にはタニシ科ではないそうなので、ねえちゃの思い出のタニシとは違うかもしれません。

それはともかく、子どものころタニシを取って来ると、一日くらい水に入れておいて泥を吐かせてから、殻ごと味噌汁に入れて食べるのが常だったそうです。

食べるとき殻から中身が出てきやすいように、殻の先のほうを割っておくのだそうですが、うまく割らないと殻の破片がジャリジャリと混ざって食べられたものではなかった、とか。

「味は」と聞くと、「ん~」と言うにとどまりました。
 

きょうも朝はあまり乗り気でなかったねえちゃですが、お嫁さんに電話で起こされて、なんとかデイサービスセンターへ行って来ました。

センターでお風呂に入ったこともちゃんと覚えているし、「5時前には帰ってきた」と、珍しく帰宅時間もちゃんと話すことが出来ました。

トライアルのときは「行きたくない」とダダをこねて行くのを拒否することもありましたが、なんとなく慣れては来たようです。

これで、センター通いも1カ月無事に続いたことになります。周りとしては、ホッとしていたところ。

センターでいろんな人とだんだん接するようになって、何か、愉しみをみつけてくれればいいのですが。

ねえちゃが飲んでいる「アリセプト」は、日本のアルツハイマー認知症治療分野で初めて世界的な評価を受けたエーザイの薬です。

アルツハイマー病は、脳の神経細胞間の情報伝達をつかさどるアセチルコリンが減少することが知られています。

脳内には、アセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼという酵素が存在します。

アリセプトはこの酵素の働きを阻害することで脳内のアセチルコリン濃度を高め、アルツハイマー型認知症の悪化を防ぐ作用があるとされます。

アリセプトは1997年にアメリカで発売され、99年に国内でも使われ出しました。日米両国を中心にピーク時には世界で3200億円強の売り上げを達成したそうです。

エーザイでアリセプトを開発した杉本八郎さんは、認知症になった母親から、誰なのとたずねられて「息子の八郎ですよ」とこたえると、「そうですか、私にも八郎という子どもがいるんですよ」といわれたことがあったそうです。

これをきっかけに、会社から2度も認知症の開発を中止するよう厳命を受けたにもかかわらず、それを拒んで開発を進めたのだとか。

きょうは、午後3時ごろ、生協から一週間分の食料が届く恒例の月曜日です。

以前は、生協の配達の人が来ても、来たことをすぐに忘れてしまって何が何だかわからないでいたねえちゃですが、ここ2~3回、来たことをちゃんと覚えているようになりました。

「食べるものなんか自分で買ってくればいい」と1年くらい前まで、生協のことはまったく眼中になかったのですが、買い物に行くことができなくなった最近は、そんなことは言ってられません。

生きていくのに「生協」が頼みの綱になってきているのですから。

物忘れがひどくなっても、生きていくのでどうしても必要な状態になれば、ギリギリのところでまた記憶にとどまるように“復旧”されるのかもしれません。

電話で話すたびにねえちゃは「なんせバカになっちゃって、困ったよ」と嘆きながらも、「お前がだれかはまだ覚えているけど」と確かめるように付け足します。

ビールなどに含まれるホップ由来の苦味成分に、アルツハイマー病の予防効果があることが、キリンと東京大学、学習院大学のグループの動物実験でわかりました。

アルツハイマー病を患ったマウスに、ホップ由来の苦味成分「イソα酸」を混ぜたエサを、3カ月間投与したところ、脳内の老廃物を除去するミクログリアという細胞が活性化。

ミクログリアが、アルツハイマー病の原因になるたんぱく質「βアミロイド」の蓄積を防いだり、炎症を抑えたりすることで、病気の進行を抑える効果があると考えられるとか。

これまでにも、適度な量の酒類の摂取は認知症の防御因子として報告されています。とくに赤ワインのポリフェノールは認知症への効果があると考えられています。

ビールに華やかな香りと爽やかな苦味をもたらすホップは、ビールの原料として1000年以上にわたって使われているそうです。

ビールがアルツハイマーの予防になるなんて思いがけない朗報ですが、残念ながらねえちゃはビールも、ワインも、どんなに誘っても酒類は頑固なまでに、決して飲もうとしません。
 

最近ねえちゃの食事のよりどころになっていて「宅食」は、土日はお休みです。

それに、生協に頼んでおいた宅配が届くのは、毎週月曜日。

ですから家にある食料は、土日がいちばん少なくなります。

若い世帯の家なら、みんなで外食に出かけることもあるでしょうが、ねえちゃはそういうわけにもいきません。

「今晩は冷蔵庫にあるもので何とかなった。でも、あしたは久しぶりにスーパーへ行こうか」と、話ていました。

ねえちゃは最近、息子の家以外に自分のほうから電話を掛けることはほとんどありません。

これといった用がないということもありますが、ときどき、電話を掛けるやりかたを忘れてしまったのではないか、と感じることもあります。

ただ、生き残っている唯一の兄弟姉妹である姉のところには、何かにつけ、電話をしたいと思っています。

でも、姉は午前中は畑に出ていることが多く、昼過ぎにはお昼寝の時間だとかで、なかなか話すチャンスにめぐまれません。

電話を掛けているという夢でも見ているためなのか、電話の仕方を忘れてしまったのか、最近は「いつ電話を掛けてもつながらない」とイライラしています。

「そんなはずはない。向こうは大家族で、誰かは必ずいるはずなんだから。ちゃんと電話番号を確かめて」と、今晩、改めて掛け直してもらうと、「通じた」と嬉しそうでした。

きょう、ねえちゃは、およそ1カ月ぶりに銀行へ行ってお金をおろしてきました。

とともに、通帳の記載がいっぱいになってしまっていたので、新しい通帳に切り替えてもらってきました。

長野県のPRキャラクター「アルクマ」くんが入った、お気に入りのデザインの通帳です。

最近ねえちゃは、生協の配達や宅食、通販などで生活のほとんどの用を足しています。

お金をやり取りするのを忘れると困るので若干の現金のやりとりはしますが、大半は銀行の引き落としに変えました。

ですから、お金を扱うことはグンと減ってきています。

でも、銀行のお客様係りの人に「**円おろして、新しい通帳にしたいんだけど」と言って、一人で用事を済ますことはまだなんとかできています。

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