Aokijima

認知症と生きる「ねえちゃ」の近況と、アルツハイマー病に関する覚書です

いやみ

部屋の蛍光灯のランプが、ついたり、消えたりを繰り返すようになって困ったと、朝、ねえちゃが言って来ました。

「いま忙しいので、そのうちに取り換えるから少しがまんして」と言って、夕方、散歩がてら近くの量販店で蛍光ランプを買って来るつもりにしていました。

ところが、ねえちゃは、そういったのを即座に忘れしまって、こんどは電気屋さんに電話をして、わざわざ取り替えに来てくれるように頼んでいます。

夕方、おかずの一品にと、割引になった鯛の刺身のパックをスーパーで買ってきて、「これ夕食用だから」とテーブルに出しておきました。

さあ、いっしょに食べようか、と食卓に行くと、私の買ってきた刺身は、ねえちゃがすでに全部たいらげているのです。

ふつうにみると、これらは「いやみ」としか思えない行為ですが、実際は聞いてもすぐに忘れてしまって、次の瞬間、必要があると思えばすぐに電気屋さんに電話するし、目の前に何かあれば食べてしまう、ということのようです。

ボケてきたからやむを得ない、とは思いながらも、こういうのが続くとさすがの私もアタマにきます。

目標が無くなって、やることを見いだせず家の中に閉じこもっている昨今、ねえちゃの症状はまた進んできたな、という感じがしています。

 

大麦

テレビで、大麦には悪玉コレステロール(LDL)を下げるなど、健康のためにすごくいいという特集をやっていました。

大麦は、新石器時代の1万年前にはシリアからユーフラテス流域の肥沃な三日月地帯ですでに栽培が始まっていた、世界でもっとも古くから栽培されていた作物の一つだそうです。

当初は、炒って麦粉にしたものを水に溶かして食べたりしていたようですが、やがてパンにする製法が開発されていきました。

農業をやっていたねえちゃの実家では、米のほかに小麦や大麦も作っていたそうです。小麦は製粉する必要がありますが、大麦は米と同じように粒のままで食べることができます。

戦中から戦後、ねえちゃが若いころ、米はたいへん貴重なものだったので、ご飯といえば米と「粒に筋が入っている」大麦が混ざっているのが当たり前。「白米だけのご飯なんて盆か正月だけ」だったそうです。

アタマのほうはともかく、すこぶる健康なねえちゃのカラダをつくたのは、大麦パワーの働きによるところが大きいのかもしれません。

目覚し

明け方の4時30分になると、ねえちゃの部屋からにぎやかな音楽が流れだします。

「なんだ」と思って調べてみると、どうも携帯電話の「目覚し」のようです。

2、3年前までやっていた朝の散歩のために、鳴るように携帯に設定してあったのが、解除されないままになっていたのです。

ねえちゃは、そんな目覚し設定のことは、とっくに忘れてしまっていたので、最近は、何か鳴っているなと思いながらも無意識にスイッチを切って眠り続けるのが日課になっていました。

このごろは散歩に出かけることがあっても夕方なので、目覚しの必要性はまったくぜんぜんありません。そこで、きょう、4時30分の目覚しを解除しました。これからは、朝のにぎやかな音楽から開放されそうです。

一日中パジャマでいて、なんにもやることはなく目覚し不要のねえちゃですが、午後7時には夕食、8時になると風呂を沸かして、10時ごろにはきちんと床に就きます。

 

選挙

いよいよ参議院議員選挙も近づいてきました。候補者のポスターが貼られる掲示板も、あちこちで見かけます。

ねえちゃには、とくにに支持している政党や候補者はありません。

連れ合いが健在だったころは、どちらかというと革新的だった夫が決めた候補者と同じ人に投票していたようです。

が、亡くなってからは、親類や近所の人の推薦とかがなければ「なんとなく」決めて、それでも投票には必ず行っているそうです。

選挙といわれてねえちゃが思い出すのが、子どものころ目にした父親の選挙だったそうです。

ねえちゃの父親は、村会議員を何期かやったそうで、選挙になると、みんな忙しそうで緊張して、よそよそしくなった、という記憶がはっきり残っているとか。

周りから「家に誰が来たとか、誰のところへ行ったとか、誰にも言ってはいけないよ」と諭されたそうです。

自分の父親が村の選挙に立候補していることも、「学校でみんなに言われて初めて知った」というような状態だったとか。

そんな子どものころの経験からか、「選挙に出るって、周りもほんとうに大変。ぜったい割に合うことじゃない」とねえちゃはよく言います。

カエルの大合唱

夜になると、ねえちゃの家の近くにある水田からカエルが一斉に鳴きだしてたいへんな賑わいをみせるようになりました。まさに「カエルの大合唱」です。

  夜の雲にひびきて小田の蛙かな(飯田蛇笏)

  蛙田の暮るゝ遅さよ雨のあと(水原秋櫻子)

などなど、俳句にもたくさん詠み込まれています。

カエルが鳴くときには、口腔内の柔らかな皮膚の膜(鳴き袋)をぷくっと膨らませている様子が目に浮かびます。

肺から送られてきた空気によって喉頭を振動させることで音を発し、鳴き袋の中で共鳴させているそうです。

どうしてこんな大合唱をするかというと、繁殖期にオスがメスを呼んで求愛する、とともに他のオスに対して縄張り宣言をする意味などがあると考えられています。

ねえちゃは、カエルが大好きです。庭でアマガエルを見つけたりすると、楽しそうに話しかけたりしています。

目標

今年のねえちゃの目標は、4月にあった親戚の結婚式、それから先日あった義姉の一周忌です。

いろいろと周りに面倒をかけたりもしましたが、どちらにも無事、出席することができました。

でも、残念ながら、これら二つの行事のことは、ねえちゃの記憶からはほとんど消えてしまっています。

それから、これらが終了してしまったことで、ねえちゃの当面の目標もまたすっかり無くなってしまいました。

だから、また朝からずっとパジャマ姿で寝ている状態がつづくようになりました。

たとえば、「好きなテレビ番組でも見つけたら」といっても、なかなか気持ちが乗ってこないようです。

「ボケちゃって」という嘆きだけが、繰り返しまた聞かれるようになりました。

 

アイスバー

だいぶ暑くなってきたせいか、ねえちゃはアイスクリームをたくさん食べるようになってきました。

以前は、モナカのバニラとか、カップ入りとかをいくつか、スーパーへ行ったときに買ってきていたようですが、近ごろは、大きいのを一気に食べるのはめんどうになってきました。

そこで、チョコレートで覆われたのやキャンディ、シャーベット、“白くまくん”など、小さなバーが10個、15個とまとめて入った箱を、週1回、生協いくつか注文して持って来てもらうようにしています。

それが、ねえちゃの生活にぴったりとハマったようです。風呂上りだけでなく、食事やお茶のたびにアイスのバーを食べるのが、お楽しみの習慣になってきました。

10本入り、20本入りとかの箱を二つくらいずつ注文して冷凍庫に置いておいても、たいてい1週間しないうちに(本人が食べたという記憶が無いうちに)カラになっています。

村長選

ねえちゃが生まれ育ったのは、徹底した財政削減や子育て支援による全国有数の高い出生率などで、「奇跡の村」として知られる長野県南部の下條村です。

「奇跡の村」の立役者である伊藤喜平村長が、今春の村議会で引退を表明しました。

伊藤村長はねえちゃより一つ年上の81歳。1992年7月に就任してから、6期24年間、強いリーダーシップで村を引っ張ってきました。

新聞報道によると、伊藤村長の勇退に伴う村長選挙は、参院選にあわせて7月5日告示、同10日投開票で行われます。

いまのところ、元村議会議長の宮嶋清伸さんと村議の金田憲治さんの新顔2人が出馬を表明しているそうです。

今度の下條村長選はまた、県内の地方選挙で初の「18歳選挙」になるという歴史的な節目にもなりそうです。

遠くに住む一都民でしかない私などに言えるのは、公私混同、権力欲と金銭のセコさ感覚しか持たぬ舛添要一知事のような、どうしようもない首長を選ぶ選挙にはなってほしくない、ということくらい。

若い有権者たちも誇りにできるような、「奇跡の村」の新時代を築くすがすがしい村長選になればいいなと願っています。 

植樹祭

一昨日、ねえちゃの家の近くにある「エムウェーブ」で、全国植樹祭が開かれました。

長野オリンピックのスピードスケート会場となったところです。

「いま、あっこでやっているのが映されているなんて、不思議な感じだね」

などと言いながら、ねえちゃは、天皇さまや皇后さまが植樹をされるテレビ中継を、じっと見つめていました。

お二人とも、ねえちゃより少し年上です。なのに、熊本地震の被災地に出かけるなど「仕事」を積極的につづけておられます。

「ボケたなんて言って、閉じこもってばかりはいられないよね」

やりたいこと見つける仕事

法事に出かける前には「ボケてどうにもならないことがバレるから何にもしゃべらない

でおこう」と何度も言っていたねえちゃですが、いざ行ってみると、久しぶりに会った

人たちなどと楽しそうにべらべら喋りまくっていました。

楽しく喋っているときは、これといってヘンなところはありません。けれど1日経て

ば、行ったことも会った人もみんな忘れてしまって、まわりは「がっくり」です。

しばらくは、これといった行事もありません。きょう電話をすると「一日なんにもしな

かったけど、何かやらなければならなきゃならないことなかったけ」といいます。

「これからは、テレビを見るとか、やりたいこと見つけることが仕事でしょ」と、こたえておきました。

 

松井潤
matsuijun@jg8.so-net.ne.jp
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