Aokijima

認知症と生きる「ねえちゃ」の近況と、アルツハイマー病に関する覚書です

冷蔵品

毎週、月曜日の午後3時には、ねえちゃの家に生協の注文品がとどきます。

以前は、米とかトイレットぺーぺーとか、買い物がしずらい、かさばるものを主に注文していたのですが、このごろ日ごろ食べるものが増えてきました。

好物の酢だこやイカ、サケ、サワラ、サンマなどの魚、お風呂上がりに欠かせないアイスクリーム、トウモロコシやバナナなど。

冷蔵庫に入れておけば長持ちするので、最近はスーパーへほとんど行かなくても、食べるのに困らなくなってきました。

ただし、届けてくれた生協の担当者が、冷凍品、冷蔵品、その他と分けてくれても、ねえちゃは最近、それらをちゃんと分けて保管できなくなってきました。

先週も、納豆やロールケーキなど「要冷蔵」の食品を冷蔵庫にしまわず、外に放って置いたまま忘れていたので、カビが生えたり、傷んでしまったものがいくつかありました。

気温が上がり腐りやすい季節だけに、心配です。

電話

ねえちゃは、下條村に住んでいる姉のところに電話をするのを楽しみにしているのですが、かけてもなかなか話が出来ません。

きょうの午前中にも電話しましたが、家に居ませんでした。午前中は、畑に出て農作業をしてるのでたいてい不在にしているのです。

「そんなに話したければ、午前中には居ないことが多い意んだから、昼過ぎとか、夜とかに電話すればいいじゃない」と言っても、すぐに忘れてしまうのか、頑固だからなのか、いつもの習慣でたいてい午前中に電話をかけています。

ボケ気味になって交際も減って、ねえちゃのところに電話がかかってくることはあまりありません。

押し売り対策のため、非通知や「0120」からの電話は、受信拒否にしてあります。

ということもあってか、これといってやることのない日々をおくっているねえちゃにとって、電話がかなり恋しくなってきているようです。

 

藤山一郎

ねえちゃはきょうも、いつものように朝から「なにもやることがない」と、パジャマでゴロゴロ。

それならヒマつぶしにと、しまってあったCDプレイヤーを取り出してきて「懐メロ」ソングのCDをかけてみました。

中に、ねえちゃの連れ合いがよく歌っていた、古賀政男作詞作曲の名曲『影を慕いて』 が入っていました。

『影を慕いて』 は、1932(昭和7)年3月に藤山一郎が歌ってヒットしました。

藤山一郎は、東京音楽学校(東京藝術大学音楽学部)を首席で卒業したとか。

ねえちゃは高校のとき、音楽の先生が「藤山一郎は、声の出し方をきちんと勉強しているので、他の歌手とは違う」と絶賛していた記憶がずっと残っているそうです。

「将来、老人ホームへ入るにしても、何かカラオケの持ち歌がないと仲間に入れてもらえないかもしれないから、何か一曲、歌えるようにしておいたら」というと、いつものように「そうだね」と気のない返事をしていました。

 

音楽

5年くらい前、ねえちゃが「ピアノを弾いてみたい」というので、田畑を越えて家から40分ほどのところにある本屋さんに行って買ってきた『完全指づかい付 今日から弾けるやさしいピアノ 心のうた』という教則本を久しぶりに見かけました。

「ふるさと」「荒城の月」「ハッピー・バースディ・トゥ・ユー」など、だれでも知っているやさしい曲が、楽譜が読めなくても、図に描かれた通りに鍵盤に指を乗せていけば弾けるようになっています。

本を使い込んだ感じはありませんが、前のほうのページに折目はついています。

「少しは練習してみたの?」と聞くと、やはり「忘れちゃった」。

昔の歌謡曲や童謡がたくさん入ったCDなんかも居間に並んではいるのですが、私は聴いても、ねえちゃはいっこうに興味を示してくれません。

「これで、ラジオ深夜便を聞いたら」と買った旧式のラジオも、最近はぜんぜん使っていないようです。

家にいるときはラジオのFM放送を流しっぱなしにしていることが多い私には、何とも不思議です。

イチロー

テレビを観ていても、いつもボーッと画面を見つめているだけで、何をやっているのかほとんど関心をもたないねえちゃ。

でも、きょう、イチロー選手が日米通算4257安打という、世界でだれもやったことがない記録を打ち立てたというニュースが盛んに流れると、「イチローってすごいね」と何度も繰り返していました。

「イチローって知っているの?」というと、ねえちゃは、

「そりゃあ知っているよ。日本人だもん。日本でもやっていた細いからだの人でしょう」。

そんな、大記録が生まれたきょうは、ちょっとだけ外へ出て、近所の子どもたちと話をしたそうです。

いやみ

部屋の蛍光灯のランプが、ついたり、消えたりを繰り返すようになって困ったと、朝、ねえちゃが言って来ました。

「いま忙しいので、そのうちに取り換えるから少しがまんして」と言って、夕方、散歩がてら近くの量販店で蛍光ランプを買って来るつもりにしていました。

ところが、ねえちゃは、そういったのを即座に忘れしまって、こんどは電気屋さんに電話をして、わざわざ取り替えに来てくれるように頼んでいます。

夕方、おかずの一品にと、割引になった鯛の刺身のパックをスーパーで買ってきて、「これ夕食用だから」とテーブルに出しておきました。

さあ、いっしょに食べようか、と食卓に行くと、私の買ってきた刺身は、ねえちゃがすでに全部たいらげているのです。

ふつうにみると、これらは「いやみ」としか思えない行為ですが、実際は聞いてもすぐに忘れてしまって、次の瞬間、必要があると思えばすぐに電気屋さんに電話するし、目の前に何かあれば食べてしまう、ということのようです。

ボケてきたからやむを得ない、とは思いながらも、こういうのが続くとさすがの私もアタマにきます。

目標が無くなって、やることを見いだせず家の中に閉じこもっている昨今、ねえちゃの症状はまた進んできたな、という感じがしています。

 

大麦

テレビで、大麦には悪玉コレステロール(LDL)を下げるなど、健康のためにすごくいいという特集をやっていました。

大麦は、新石器時代の1万年前にはシリアからユーフラテス流域の肥沃な三日月地帯ですでに栽培が始まっていた、世界でもっとも古くから栽培されていた作物の一つだそうです。

当初は、炒って麦粉にしたものを水に溶かして食べたりしていたようですが、やがてパンにする製法が開発されていきました。

農業をやっていたねえちゃの実家では、米のほかに小麦や大麦も作っていたそうです。小麦は製粉する必要がありますが、大麦は米と同じように粒のままで食べることができます。

戦中から戦後、ねえちゃが若いころ、米はたいへん貴重なものだったので、ご飯といえば米と「粒に筋が入っている」大麦が混ざっているのが当たり前。「白米だけのご飯なんて盆か正月だけ」だったそうです。

アタマのほうはともかく、すこぶる健康なねえちゃのカラダをつくたのは、大麦パワーの働きによるところが大きいのかもしれません。

目覚し

明け方の4時30分になると、ねえちゃの部屋からにぎやかな音楽が流れだします。

「なんだ」と思って調べてみると、どうも携帯電話の「目覚し」のようです。

2、3年前までやっていた朝の散歩のために、鳴るように携帯に設定してあったのが、解除されないままになっていたのです。

ねえちゃは、そんな目覚し設定のことは、とっくに忘れてしまっていたので、最近は、何か鳴っているなと思いながらも無意識にスイッチを切って眠り続けるのが日課になっていました。

このごろは散歩に出かけることがあっても夕方なので、目覚しの必要性はまったくぜんぜんありません。そこで、きょう、4時30分の目覚しを解除しました。これからは、朝のにぎやかな音楽から開放されそうです。

一日中パジャマでいて、なんにもやることはなく目覚し不要のねえちゃですが、午後7時には夕食、8時になると風呂を沸かして、10時ごろにはきちんと床に就きます。

 

選挙

いよいよ参議院議員選挙も近づいてきました。候補者のポスターが貼られる掲示板も、あちこちで見かけます。

ねえちゃには、とくにに支持している政党や候補者はありません。

連れ合いが健在だったころは、どちらかというと革新的だった夫が決めた候補者と同じ人に投票していたようです。

が、亡くなってからは、親類や近所の人の推薦とかがなければ「なんとなく」決めて、それでも投票には必ず行っているそうです。

選挙といわれてねえちゃが思い出すのが、子どものころ目にした父親の選挙だったそうです。

ねえちゃの父親は、村会議員を何期かやったそうで、選挙になると、みんな忙しそうで緊張して、よそよそしくなった、という記憶がはっきり残っているとか。

周りから「家に誰が来たとか、誰のところへ行ったとか、誰にも言ってはいけないよ」と諭されたそうです。

自分の父親が村の選挙に立候補していることも、「学校でみんなに言われて初めて知った」というような状態だったとか。

そんな子どものころの経験からか、「選挙に出るって、周りもほんとうに大変。ぜったい割に合うことじゃない」とねえちゃはよく言います。

カエルの大合唱

夜になると、ねえちゃの家の近くにある水田からカエルが一斉に鳴きだしてたいへんな賑わいをみせるようになりました。まさに「カエルの大合唱」です。

  夜の雲にひびきて小田の蛙かな(飯田蛇笏)

  蛙田の暮るゝ遅さよ雨のあと(水原秋櫻子)

などなど、俳句にもたくさん詠み込まれています。

カエルが鳴くときには、口腔内の柔らかな皮膚の膜(鳴き袋)をぷくっと膨らませている様子が目に浮かびます。

肺から送られてきた空気によって喉頭を振動させることで音を発し、鳴き袋の中で共鳴させているそうです。

どうしてこんな大合唱をするかというと、繁殖期にオスがメスを呼んで求愛する、とともに他のオスに対して縄張り宣言をする意味などがあると考えられています。

ねえちゃは、カエルが大好きです。庭でアマガエルを見つけたりすると、楽しそうに話しかけたりしています。

松井潤
matsuijun@jg8.so-net.ne.jp
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