Aokijima

認知症と生きる「ねえちゃ」の近況と、アルツハイマー病に関する記録です

川中島

ねえちゃの家のあたり一帯は、いまから500年近く前、「川中島の戦い」が繰り広げられたところです。

あの武田信玄と上杉謙信が一騎打ちをしたとされる八幡原、さらには、いまは長野オリンピックのスタジアムのある運動公園になっている、山本勘助が戦死したとされる地も近くにあります。

ちょっと散策に出かければ、武田軍や上杉軍の武将たちの史跡やお墓、関連するお寺もたくさんあります。

信玄が川中島決戦の拠点として勘助に築城させたといわれ、また「真田丸」でもお馴染みの真田十万石の居城、海津城(松代城)もバスで15分ほどのところにあります。

ゴールデンウィークのさ中、海津城や真田屋敷などは、例年にも増して観光客でにぎわいを見せているようです。

でも、ねえちゃにとって「川中島」といえば、石坂浩二の謙信と高橋幸治の信玄が一騎打ちを演じた、だいぶ前のNHKの大河ドラマ「天と地と」が思い出されるくらい。これといった興味はないようです。

散歩に出かけても史跡など目もくれず、ときおり携帯電話の歩数表示に目をやりながら、迷わないようにと一途に歩いています。

 

マツヤ

ねえちゃの買い物といえば、たいていは、家から歩いて5分ほどのところにあるスーパー「マツヤ」です。ねえちゃの生活は「マツヤ」で成り立っている、といってもいいくらいです。

「マツヤ」は、長野県の東北信地方を中心に26店舗の食品スーパーマーケットチェーンを展開していた会社です。が、最近、吸収合併されて会社としての「マツヤ」はなくなってしまいました。

同社のホームページをのぞいてみると「平素から格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。株式会社マツヤは2016年4月1日より、株式会社デリシアになりました」とありました。

1914(大正3)年に乾物店として創業してから、100年以上、地域で親しまれてきた会社でしたが、2010年代に入ると経営が悪化。アルピコグループの傘下に入り、4月から同グループ傘下のスーパーを展開する会社に吸収合併されて「デリシア」になった、ということです。

ねえちゃの最寄りのお店の名前はまだ「マツヤ」のまま営業していますが、3年間で30億円以上かけてマツヤ全店の改装・建て替えを進める方針で、店名も順次「デリシア」に統一されていくとか。

ずっと親しんできた「マツヤ」という会社がなくなってしまったことを、ねえちゃはまだ知りません。

でも、ときおり「このごろお客さんが少なくなったように思えるんだよね。つぶれちゃったら困るなあ」というようなことを話していた矢先のことでした。

名前が変わっても、とにかくスーパーとして(できれば、より安いお店として)残ってほしい。ねえちゃも私も、願いは同じです。

 

竹の子とまん十

いろいろとお世話になっているねえちゃのおいが、とりたての竹の子をねえちゃの家へ届けてくれると言っていたので、夕方「竹の子もってきてくれたの?」と電話をしてみると、ねえちゃは「いや、来てないよ」と言います。

「ほんと? 部屋とか、台所とかに置いてないの?」と念を押して、ねえちゃに探してもらうと「ああ、来たんだわ。一二三屋のまん十がテーブルの上に置いてある」。

車でわざわざ遠から届けてくれたのに、ねえちゃはすっかり忘れていたのでした。

よくよく聞くと、いただいた竹の子の一部はもうすでに近所にお裾分けし、自分でも食べようと茹でていた、ということも分かりました。

「一二三屋のまん十」は、ねえちゃも私も大好きな飯田の銘菓です。北海道産小豆のこし餡と沖縄産サトウキビの黒砂糖で作られた、素朴でやさしい味わいがなんともいえません。

彼が来るときは、必ずといっていいほどお土産に持ってきてくれるので、来たことを忘れてしまっても、名物まん十が、その“証し”になってくれるのです。

今年も旬の竹の子、そして忘れられない味わいのまん十。ありがたく、ごちそうになります。

「アタマのほうが……」

「カラダのほうは元気なんだけど、アタマのほうがおかしくなっちゃって」。ねえちゃは最近、あいさつのとき決まって、そんなふうに口にするようになりました。

確かに、カラダは元気です。薬といえば、高血圧がたまに高くなることがあるので“念のため”程度に1日に1錠ずつ飲んでいるだけ。血圧の薬2種に血糖値を下げる薬を飲んでいる私のほうが、ずっと重症です。

多少風邪気味かなというときには葛根湯を飲めば、すぐ治ってしまうといいます。足腰が痛むこともなく、眼鏡をかけなくても日常生活に不自由はありません。

ひとに迷惑をかけまいと、人一倍、健康に気遣ってきたのが功を奏したわけですが、お医者さんでもなかなか手に負えない「アタマのほう」でこんなに悩むことになるとは、ねえちゃも想定していなかったようです。

「お酒を飲んだり、無茶して何かに夢中になったり、カラダに多少悪いことしたほうがかえってアタマにはいいんじゃない?」というと、「ん~」。

きょうは、連休中に誰かが来てもいいようにと、ねえちゃにとってのお土産の定番である「みすゞ飴」などのお菓子を買いに出かけたそうです。電話をすると「まだ、お前の声は分かる。大丈夫だ」と元気そうでした。

鍵がない!

ねえちゃの心配事の一つは、散歩に出かけたときなどに、鍵を落としたり失くしたりしてしまうことです。

落としたらすぐに分かるように、鍵には大きな音のする鈴を付けてありますが、立ち寄ったお店などに置き忘れて鈴の音がしなくなっているのにも気づかない、なんてこともありえます。

道に迷ったときには、近所の人に助けてもらうことができますが、家の外で鍵を失くしたら、誰か居るときでなければ家の中に入ることができなっくなってしまいます。

家に誰も居なかったきょう、散歩に出かけたねえちゃは、鍵を失くしてしまって探すのに「えらいたいへんな」思いをしたそうです。

家に帰ってみると、いつも財布なんかといっしょに持ち歩いている鍵がありません。でも、家に入れたということは、自分で玄関のドアを開けたはず。

とすれば、家の中にあるはず、ということには気づいて、家中を探し回ったそうです。幸い、普段はあまり使うことのない二階の部屋に、なぜか置き忘れていたのを発見!事なきを得ました。

私は、鍵を忘れないようにいつも首にぶら下げて歩いています。「少しカッコウ悪いけど、ぶら下げてみたら」とねえちゃにすすめると、「そうせんとダメかなあ!」と言ってました。

 

パソコン

ねえちゃは、いまはパソコンを使ってはいません。でも、以前は、使えるようになろうと、文字の打ち込みなど練習をしていたことがあります。

5年前、WiFiなどに対応した新しいパソコンに買い替えました。そして、ねえちゃがずっと続けている日記帳とは別に、「他の人が読んでもいい内容」の「記録」を、wordで打ち込んでいく練習をはじめました。

「パソコンが動かなくなった」「漢字がうまく変換できない」など、周りに尋ね、尋ね、変換を間違えながら、2011年11月から2013年12月まで2年間、パソコンへの打ち込みを続けました。

ねえちゃがパソコンで打った「記録」は、2011年11月21日付の次のような記載から始まっています。

〈今朝は、今秋一番の寒さ朝の散歩は取り止め。午前中、笠間病院へ行く。寒いせいかあまり混んでいなく、割合早く終わる。

午後、パソコンに向かうが、なかなかうまくいかない。これでは何時になったら出来るのか、頭の痛いことだ。

今晩は、初めてのパエリアを宅配で取ってみる。どんなものか楽しみだ。〉

コゴミ

山村で育ち、結婚してからも木曽谷、鬼無里など、山を転々としてきたねえちゃは、ワラビやゼンマイなど、山菜が大好きです。

むかしはよく、山菜採りにも出かけましたが、最近はそんな機会もほとんどなくなっています。

先日、近所のかたからコゴミをたくさんいただきました。「これは、お浸しに限る」と、ここ数日、毎食のように茹でては食べて、今日、ほぼ食べ終わったそうです。

コゴミは、正確にいうと多年生シダ植物の一種のクサソテツ(草蘇鉄)のことです。コゴメ、カンソウ、ガンソウとも呼ばれます。

主に、山菜として食用にされる若葉をコゴミ(屈)というようです。先端が渦巻き状に巻き込まれたようになっている姿が、かがんでいるように見えることなどから、そう呼ばれるようになったとか。

山地の草原や川岸に群生します。いまごろから6月中旬ごろにかけて、しばしば若葉を摘みに行って、お浸しやゴマ和え、天ぷら、サラダなどにして食べます。

ねえちゃは、「コゴミは、さっと軽くゆでて作るお浸しがいちばんおいしい」といいます。ゼンマイのようなアクがないし、ワラビほどではないがほどよい“ぬめり”がある。そうした特性を生かすには、お浸しが最も合っているというのです。

さすがに慣れたもので、最近よくやってしまう「茹で過ぎ」の失敗もなく、ほどよいサクサク感。いっしょに私も、春を味わわせていただきました。

 

連休

いよいよ連休が近づきましたが、出歩くことがあまり好きではないねえちゃは、これといった予定は、いまのところありません。

「孫でも来るようなら、戸隠へでもいっしょに連れてってもらおうかな」とった程度です。

連休中は病院も、歯医者さんもやっていないので「予約日」はありませんし、宅食の配達も休みになります。

でも、ねえちゃの好物の酢だこやイカ、魚は、生協に注文して冷凍してあるし、近所からもらった山菜や果物もたくさんあります。

連休、ほとんどスーパーへ行かなくても飢えることはなさそうです。

いつものように好きなものを食べて、お風呂にゆっくり浸かって、ねえちゃには、それが最適な連休の過ごし方なのかもしれません。

ただし、連休中は、散歩の途中で帰り方が分からなくなって近所の人に迷惑をかけるようなことはしないようにしよう。そんな心構えではいるようです。

 

 

 

首を長くして待って

ねえちゃのいまの一番の課題は、スコッと根っこから抜けてしまった奥の歯の治療です。

近くの歯医者さんに通い出してこれまで3回治療を受けましたが、直前に嫌になって行かなかったり、キャンセルしたのが4回になります。これまで、3勝4敗です。

しょうがないので、私が自分の歯の治療といっしょに二人分予約しておき、きょう、二人で歯医者さんへ行ってきました。

ねえちゃが先で、後の私のほうが、治療に時間がかかりました。

「まだ時間がだいぶかかるので、首を長くして待っててください」と先生に言われて、ねえちゃは言われた通り「首を長くして」待っていました。

ねえちゃは、自分の歯がどんな具合に治療されているのか、さっぱり分かっていません。

それでも、事務のかたから「次回は、義歯が入りますので、少しお金がかかります」と言われ、ホッとしていました。

4勝4敗のイーブンで、どうやら、めでたく、次は待望のねえちゃの歯が入りそうです。連休明けに、また二人分の予約をしました。

鑑定団

日曜日の昼、たまにチャンネルを合わせる「なんでも鑑定団」で、長野県の長和町で収録された回の放送をやっていました。

ねえちゃは骨董品には興味がありません。それに、これといって財産になりそうな美術工芸品も、ぜんぜん持っていません。

けれど、番組で「蔵の奥にしまわれていた」とかいう話が出てくると、昔ながらの農家で、23歳まで過ごした実家のことをいつも思い浮かべるそうです。

決して財産家ではなかったようですが、十くらいの部屋に土蔵とかもあって、長年暮らしていても、広くてどこに何があるのかよくわからなかったとか。

ねえちゃのお父さんは、料理が上手だっただけでなくいろんなものに興味を持っていて、行商の人が珍しいものを持って来ては置いていったような記憶もあるといいます。

実家はきれいに改修されていまも“健在”ですが、いまは常時住んでいる人はいません。

「高価なものはないだろうけど、奥のほうの座敷とかに何か残ってたものがあるのかもしれない。あそこの家がなくなる前に、掛け軸の一本でもいいから見ておきたいな」と、ふと口にしました。

 

 

松井潤
matsuijunta@gmail.com
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