Aokijima

認知症と生きる「ねえちゃ」の近況と、アルツハイマー病に関する記録です

2勝3敗

一昨日、行く直前になって突然キャンセルしてしまった歯医者さん。どうにか電話をして、1週間後の31日の予約を取りました。

これまで直前になって3度もキャンセルしたので、歯科の受付の人から大丈夫ですかと念を押されたのか「いまのところ行けると思いますが……」と、「ねえちゃ」はイマイチ自信なさげでした。

なぜか分からないけれど突然「登校拒否児」に変身したように、直前になると「行けない」と頑なに言い出す「ねえちゃ」。

近ごろではほとんど唯一の外出先となった歯医者さんには、これまで2回診てもらって、3回キャンセル。2勝3敗、それでもイチローの打率を上回る、4割の成績です。

最近の「ねえちゃ」としてはまずまずといえるかもしれませんが、けがに苦しむ照ノ富士だってカド番を脱したのだから、少なくとも「勝ち越し」はしてもらいたいもの。

というのも、親せきの結婚式に行く、という当面の大目標が2週間後に迫っているからです。

今回の3度目の歯医者さんキャンセルで、「こんなんじゃ、結婚式は迷惑かけるばかりだから断ろうか」と弱気な言葉が「ねえちゃ」から漏れはじめました。

「結婚式に出席するんだ、と固く考えることはないんで、たった一人の姉さんと久しぶりに、言いたいこと喋りまくりに行けると思えば、楽しいじゃん」と話すと、少しは気持ちのベクトルを変えることができたようです。

ですが、美容院へ行ったり、着ていくものを決めたりと、「ねえちゃ」にとってはすこぶる高いハードルが、これからいくつも待ち構えているのです。

気まぐれ

「ねえちゃ」の歯医者さんの予約は、きのうの午後2時30分になっていました。

ひと騒ぎしてようやく見つかった、現在有効な「黄色い保険証」と診察券を、忘れないようにテーブルの上に揃えて置いてあります。

「まだ、1時間くらいあるね」

と、行く気になっているように見えたので、パジャマを着替えて、きのうの散歩のようにスムーズに出かけれられそうだとホッとしてました。

ところが、予約の時間になっても「ねえちゃ」が出掛けた様子がありません。

「どうしたの。行かなくていいの?」と聞くと、まだパジャマのまま「何となくふらふらするような気がして、断りの電話を入れた」と答えます。

いつものように、熱もなければ、血圧の異常もない、食欲も十分ある。居間でテレビを眺めていて、横になる必要もなさそうです。

ハタから見ていると「気まぐれ」としか思えない、いつもの「直前キャンセル」でした。

パジャマを着替えるのが面倒になったのか、登校拒否のような反射的な拒絶反応なのか、急に「鬱」が襲ったのか。

しばしば周りを驚かせる、病的とも思える「豹変」です。

なんのために苦労して「黄色い保険証」を探したのか。

とにかく、あした起きたらパジャマを普段着に着かえて、歯医者の予約を取ること。そう約束をしましたが、果たしてどうなることでしょうか?

5000歩

「ねえちゃ」の携帯電話は、シニア向けの「らくらくホン」です。連れ合いが亡くなった直後の4年ほど前に買い替えて、けっこう気に入っているみたいです。

だいぶ使い込んできたので「それそろスマホにでも替えたら」と聞いても、「とてもそんなの使えないからだめ」と受け付けません。

とはいえ、めったにかかって来ないので電話として使うことはあまりありません。以前はメールを打つこともありましたが、最近は、面倒になってきたみたいです。

現在、もっぱら「使い込んで」いるのは「歩数計」の機能。トップ画面に大きな字で出てくるようになっていて、珍しくリセットの仕方も忘れずに覚えています。

以前、毎朝、散歩を欠かさずに続けていたころは、携帯に目をやりながら「8000歩以上」の目標をきっちりクリアするように気を配っていました。

しかし最近では、8000歩以上歩くところまで行くと、迷って帰り道が分からなくなる、というような事態がしばしば発生するようになり、散歩するのがおっくうになりつつあります。

「暖かくなってきたのだから、目標の結婚式出席を達成するためにも、パジャマを着替えて外へ出てみたら」と言うと、きのうは午後になって散歩へと出かけて行きました。

比較的はやく帰ってきたなと思ったら、「携帯」の表示は5563歩。本人も「迷わなかった」と満足そうです。これからは、5000歩をメドに無理をせずに歩くのがベスト。そんな気がしています。

 

お彼岸とおやき

「ねえちゃ」はきのう、めずらしく午前中からパジャマを着替えて、「花を買って来る」と散歩がてらスーパーへ出かけました。

一昨日の夜、半額セールのおはぎを買って帰ったら、「そういえばお彼岸だったね」と、ハタと気が付いたようです。

お彼岸なのに、仏壇の花がしおれかかっているのが気になってしかたがなくなって、黄、紫、ピンクなど、「うちの仏壇に置けるような小さなお花」をいくつか買って来たのでした。

花といっしょに「ねえちゃ」は、ナス、野菜、小豆、野沢菜などの「おやき」をたくさん買ってきました。

おやきは、小麦粉や蕎麦粉を水で溶いて練り、薄くのばした皮で野菜や小豆などで作ったあんを包んで焼いた信州ならではの食べもの。形はふつう円形で、8センチくらいのが一般的です。

「ねえちゃ」によると、お彼岸に、長野では、「なぜかわからないけど、みんなでおやきを食べる」ことになっているんだそうです。

彼岸会は、サンスクリット語の「波羅密多」から来たもので、煩悩と迷いの「此岸(しがん)」の世界にある者が、「六波羅蜜」(ろくはらみつ)の修行をすることで「悟りの世界」すなわち「彼岸」の境地へ達することが出来る、というものだそうです。

お彼岸に限らず、何かあれば、おやきを食べている「ねえちゃ」のことです。きっと「彼岸」の境地へいくことができるでしょう。

 

お返し

近所の人からのいただき物や、親せきからの贈り物などには、不義理のないようにきちんとお返しをすることを「ねえちゃ」は、とても大切にしています。

「ねえちゃ」におみやげを持って行っても、本人に食べてというよりも、世話になっている人にあげて、といったほうが喜びます。

ところが最近もの忘れが多くなって、「もらった」ことをちょくちょく忘れるようになってしまいました。でも、義理を欠くことだけはしないようにしようと必死です。

昔の知り合いへの香典の立替えをしてくれた親せきなどに、「立替えのお金送ったっけ」と何度も電話をしたり、2度送ってしまいそうになったりすることもあります。

自分勝手に生きてきた私には、「ねえちゃ」が、義理を欠かないようにと人との関係ばかりを気にしないで、もっと自分自身がどうしたい、といったあたりに目を向け欲しいとじれったく思えることがよくあります。

先日、亡くなったお母さんの衣類をたくさんいただいたお隣にも、何かお返しをしなければと「ねえちゃ」はずっと悩んでいました。

そして、東京にいるお嫁さんに選んでもらって届けられた贈り物を、一昨日、やっと手渡すことができました。

「嬉しそうに受け取ってくれて良かった。飼っている犬のこととか、久しぶりに話をすることもできたし」と「ねえちゃ」は満足そうでした。

「どこにあったか、わからない」

「無い、無い」といって騒いでいた、黄色い保険証、きのうになってどこからか出てきたようで、古いオレンジ色のといっしょにテーブルの上に置かれていました。

「大騒ぎして探しても見つからなかったのに、どこにあったの?」と聞くと「ねえちゃ」の返事は、「わからない」。首を傾げるばかりです。

そして、「市役所の支所に行って、黄色いのだと言って……、もらって来たのかな?」などと、いつもの「夢かうつつか妄想か」あたりの、わけのわからないことを言いはじめます。

「そんなはずないでしょ。支所は土曜日だから休み。去年の夏、もう郵送されて来ているのに、いま行ったからってすぐくれるはずないでしょ。しっかりしなよ」。

「どこにあったかぜんぜん覚えていない」ということことからすると、「特別にめずらしいところから出てきたのではない」という可能性が高そうです。

ということは、いつも身につけている財布か携帯電話のケースあたりにしまい忘れていたのが、寝て起きてみんな忘れてリセットしたら入っているのに気づいた、というあたりがいちばん真相に近そうです。

「しまい忘れた」というより、「無いと思い込んでいた」と言ったほうが正確かもしれません。

一昨日、家の中を一日中、探し回っていたのは何だったのでしょう。といっても、「ねえちゃ」は当然のごとく、探し回っていたことさえすっかり忘れているので、どうってことはないのかもしれません。

何はともあれ、見つかって一安心。混同して歯医者さんでまた注意されないようにするため、「ねえちゃ」は名残惜しそうに、期限が切れたオレンジ色の保険証のほうにハサミを入れて処分しました。

 

黄色い保険証

きのう「ねえちゃ」は朝から、「保険証がおかしい」「保険証がおかしい」と言って騒いでいました。

突然なにを言い出しのか、あれこれ聞いてみると、どうも自分が持っている「後期高齢者医療被保険者証」の有効期限が切れているようなのです。

確かに、オレンジ色をした保険者証には「有効期限 平成27年7月31日」とあります。ずいぶん前に期限が切れているわけです。

でも、どうして急にきのうになって、それに気が付いたのでしょう。考えられるのは、一昨日行った歯医者さんです。

「ねえちゃ」は、どこの歯を診療したかはもちろん、歯医者へ行ったかどうかも、すでに覚えていませんが、診察券に次の予約日が入っていることからすると、行ったことは間違えなさそうです。

とすると、歯医者の受付の人あたりに、保険証の有効期限が切れていることを指摘されて、「こんどは新しい保険証を見せて下さいね」とかなんとか言われたことが予想されます。

不確かな記憶をたぐり寄せながら、「そういえば、黄色い保険証のはず、とかなんとかどこかで言っていた記憶がある」と「ねえちゃ」も言います。

新しい黄色い保険証は、財布やバックにも見当たりません。いま有効な保険証が「ねえちゃ」の手元にないことが判明したのです。

とすれば手掛かりは、昨年の切り替え時に市役所から簡易書留で送られてきたはずの封筒にありそうだと、家のあちこちを探し回りました。

結果は、保険証が送られてきたことが分かる一昨年まで3回分の封筒は出てきましたが、肝心の昨年のものが見つかりません。

当然「ねえちゃ」に、受け取ったか受け取らないかの記憶はありません。でも、毎年来ていたのに、昨年だけ送られて来なかったというのも考えずらい。

とすれば、家のどこかにきっとあるはず。というわけで「保険証の捜索」が、「ねえちゃ」の連休の最大の“仕事”、ということになりそうなのです。

ちょこっトリップ

「ねえちゃ」の家の戸棚を整理していたら、「ちょこっトリップ」の添乗員さんからのハガキがたくさん入ったホルダーが出てきました。

「ちょこっトリップ」は、「裾花観光」という会社がやっている「アットホームな雰囲気」が魅力のバスツアー。旅行が終わると、毎回、添乗員さんから参加者たちの集合写真が入ったハガキが送られてくるのです。

平成16年7月から平成20年9月まで、「富士見高原ゆりの里」「トロッコ列車で行く黒部峡谷」「草津温泉を遊ぶ」「長岡まつり花火大会」「伊勢神宮初詣の旅」「小京都・高山散策と飛騨高山温泉の旅」「雲上の温泉~万座温泉ホテル~の旅」などなど、20カ所を超える観光地に、連れ合いといっしょに出かけていることがわかります。

ハガキの写真を見ると、「ねえちゃ」夫妻は意外に真ん中のほうにドンと陣取って、穏やかで楽しそうに写っているのが多いように思われます。夫がいつもの帽子にいつものジャンパーといった感じなのに対し、「ねえちゃ」は旅にあわせて、なかなかおしゃれな服装をしています。

「ねえちゃ」はこの旅のことを今はあまり覚えていないようですが、夫が「アルコール依存症」をなんとか克服して、入院前のまだ歩くことができていたころ。きっと、ふたりの安らぎと思い出が刻まれていった旅だったに違いありません。

 

電気屋さん

営林署の職員だった夫に伴って山里を転々としてきた「ねえちゃ」は、行く先々で町の数少ない電気屋さんと親しくなって、掛かり付けのお医者さんのように、購入から修理まで家電の一切をそこに任せてきました。

転勤の際には、そんな電気屋さんに送別会を開いてもらったりすることもありました。いま住んでいる長野でも、もう40年以上、一軒の電気屋さんに一切を任せています。

電気屋さんに言われるままに、電気製品をそろえてきたので、一人暮らしの割には家電は充実しています。

大型のテレビが2台、コンロやグリルなどキッチンやお風呂もオール電化、床暖房も完備、昨年は冷蔵庫も最新のものに買い替えました。

「家の中のものみんな電気だから、火事を起こす心配がない」というのが「ねえちゃ」の自慢です。

でも最近、自分で料理をすることが少なくなったうえ物忘れがひどくなり、グリルの使い方さえ忘れてしまうことが多くなりました。

そのたびに電気屋さんの、お馴染みの担当者に電話をかけて聞いたりしていましたが、最近、定年になったのか、そのお馴染みさんが店を辞めたらしく電話がつながらなくなって来ました。

近頃は、大型量販店や通販が増えてきて、気軽に修理の相談などにのってくれる電気屋さんが少なくなってきました。

「これから、壊れちゃったらどうしよう」。オール電化の家に住む「ねえちゃ」は、ちょっぴり不安になっています。

カントのように

最近は、一日中パジャマで家にいることが多い「ねえちゃ」ですが、以前は「カントのように」規則正しい生活を送っていました。

カントはドイツの大哲学者です。生涯独身で、大学から帰宅すると、決まった道筋を決まった時間に散歩をしました。その時間があまりに正確なので、散歩の通り道にある家では、カントの姿を見て時計の狂いを直したと言われています。

この逸話を知っていた「ねえちゃ」の夫は、規則正しいことを表わすのに「カントのように」という比喩をよく使っていたのです。

「ねえちゃ」の場合、散歩は朝でした。4時半ごろ起きて、5時くらいに出かけてNHKのラジオ体操がはじまる6時30分の寸前にピッタリ帰って来るというのを日課にしていました。

カントほどではないにしても、散歩では「いつも同じあたりで同じ人に会って、おはようございますというの」と自慢していました。

けさはあれを見てあっちで一休みして、といういい加減な散歩ではなくて、ただいつもの道を、いわば虚無僧のように歩いて時間までに帰って来る、というタイプ。

帰ってきてラジオ体操が終わると、ご飯に味噌汁、海苔、納豆といったいつもの朝食を取って、洗濯にかかるのです。

とても健康的で良いことは良いのですが、生真面目な「ねえちゃ」は「ラジオ体操に間に合うように散歩ができる時間に起きないと」と、眠れないのが気になり、しばしば睡眠導入剤を飲むようになりました。

やがて、そんな朝の散歩になんとなく疲れてしまったみたいです。でも、気が向くとラジオ体操はときおりやっています。

松井潤
matsuijunta@gmail.com
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