Aokijima

認知症と生きる「ねえちゃ」の近況と、アルツハイマー病に関する覚書です

とろろ昆布

以前、ねえちゃは毎朝みそ汁をつくるのが日課でした。ワカメや大根、油あげ、ニンジンなど、具がたっぷり入っているのが持ち味でした。

認知症が進んできた昨今では、みそ汁をはじめ、料理らしい料理はまったく作れなくなってしまいました。

最近は、手作りとそんなにかわらないフリーズドライのみそ汁が出ているので、それを台所に置いたりしているのですが、利用しようとはしません。

「お湯を入れるだけでいいんだから」といっても、使った経験がないので、それがどういうものか頭にインプットできずにいるようです。

しかたないので、とろろ昆布なら以前から食べていたし、インスタントのみそ汁と同じように簡単にできるので「これ、朝、お湯をかけて醤油を入れるだけだから」と、台所の目につきやすいところに置くようにしました。

ですが、まだ、いっこうに食べようとしてはくれません。

見送り

トランプ大統領とメラニア夫人が皇居を訪れて、天皇皇后両陛下と会われました。いつもにないトランプ大統領の穏やかな表情が印象に残りました。

両陛下は、会見が終わってトランプ夫妻が車に乗り込み去っていくのを、姿が見えなくなるまでずっと見送っておられたそうです。

ねえちゃも、たいていいつも、親戚やお客さんが帰るとき、姿が見えなくなりまでずっと手を振って見送ってくれます。

きょう私が東京へ帰るときも、パジャマ姿で玄関に出て、いつまでも手を振っていました。認知症になって、いっそう、一人でいる寂しさがつのるようになっているのかもしれません。

エゴイスト

ねえちゃには「何を食べたい」というものは、ぜんぜんありません。ただ、肉はあまり好きではありません。

「食べたいものないの?」と聞いても、キョトンとしているだけ。最近は何を買ったらいいのか分からないのでスーパーへ入るのも怖くなって、行きたがりません。

だから、ねえちゃの1週間分の食料品を生協に注文するのは、私が独断と偏見で適当にやっています。生きるベースである「食べる」ということにも意欲がないというのは、なんともやっかいです。

それでも、食欲は旺盛そのものです。お腹がすいたと思うと、周りにおかまいなく何時でも勝手に、ご飯と冷蔵庫の惣菜、それに饅頭やらなんやらで、ムシャムシャ食事を取っています。

最近は、そろそろ夕飯にしようかと茶の間へ行っても、たいてい「もう食べちゃった」と平然としています。エゴイストそのものです。

リハビリ

きょうは、デイサービスの日。雨が降ったりやんだりしていましたが、支障はなかったようです。

センターで、頭のトレーニングや平行棒、ストレッチなど、いろんなリハビリもしたようですが、いつものようにみんな記憶からは飛んでいました。

「リハビリだと思って、食べたものでも、みんなで歌った歌でも、何か一つ、頭に入れるかメモするかしたら」というのは、きょうもダメでした。

昨日、甥から聞いた、脳溢血で倒れて体が不自由になったけど、病気を治そうと懸命にリハビリにがんばっている姉さまの話も、「なんのことか」とすべて忘れてしまっています。

「敗けないでリハビリしたら」といっても、何が、どうすることが、リハビリなのか、ねえちゃの頭は、ぜんぜん“消化”できないでいるようです。

姉さま

近くまで来たからと、ねえちゃの実姉の長男が寄ってくれました。

「実は」ということで甥が話すには、ねえちゃの「姉さま」がこの夏、畑で、脳溢血のため倒れ、リハビリで最近まで入院していたのだそうです。

多少からだに障害は残ったものの、幸い、最悪の事態に陥ることはなく、リハビリに励んでいるのだとか。

「姉さま」は92歳。いまは家族でめんどうをみていますが、今度の病気で介護がより大変になりつつあるようです。

からだは多少不自由だけど、何ごとにも前向きな「姉さま」。からだは元気だけど、認知症であたまがままならない妹。それぞれに「老い」と対峙しています。

新鮮な驚き

連日報道されている神奈川県座間市のアパートで、切断された9人の遺体が見つかった事件。警視庁に逮捕された白石隆浩容疑者(27)は、今年8月下旬にアパートに引っ越してきてから9人全員を殺害したと供述しています。

連日報道される前代未聞のこの想像を絶するニュースをテレビで見るたびに、ねえちゃは「え、9人も殺したんだって。酷いね!」と、同じような言葉を、そのたびごと繰り返し口に出して驚いています。

「あれはきのうもテレビでやっていた」というように、時系列をたどりながらものごとを見たり、考えたりすることが、最近はまったく出来なくなりました。

一刻一刻が新鮮な驚きで、それが瞬間に消えていってしまいます。ただ、それがどんな出来事であるかだいたいのことはまだ分かっているようです。

化粧水

きょうはデイサービスの日。いつものようにセンターで風呂へ入ったこと以外はみんな忘れていましたが、無事に帰ってきました。

リハビリだと思ってセンターで出た食事とか、みんなと話したこととか、一つでいいから何をやったか頭に入れるかメモするかして来たら、という課題もなかなか果たすことはできません。

最近、ねえちゃは、買い物をすることもほとんどできなくなりつつあります。近くのスーパーがリニューアルオープンして1カ月以上になりますが、まだ1回も入っていません。

きのう「化粧水や乳液がなくなっちゃう。どうしよう」と困っているので、残り少なくなった青いビンを持って近くのドラックストアへ私が買いに行ってきました。

11月

あしたから11月。月が替わります。ねえちゃの頼りの綱のカレンダーも新しいページにめくり、赤いマジックで予定を書き込みました。

各週、水曜日と土曜日のところにはデイサービスのセンター名を、月曜日の欄には、その週の食料品を持ってきてくれる「生きょう」と書き入れました。それから、資源ゴミや町内の清掃の日も。

1年くらい前までは「生協」と書けたのですが、「協」という字を忘れてしまったようです。

半月ごとに入れ替えている、ピルケースの薬の詰め替えも終えました。

認知症の症状は、少しずつ確実に進んでいます。厳しい雪の季節も乗り越えなければなりません。

マル

きのうの市長選・市議補選。本当のところ、投票に行ったのか、行かなかったのか。

きのう昼には寝間着姿で「体の調子が悪いので行かない」といっていました。ところが、夕方になると「朝早く確かに投票に行った」といいます。

でも、ねえちゃはどんな人が立候補しているかも、現職の市長さんの名前も知りません。

「じゃ、誰の名前を書いたの?」と聞くと、「誰だか忘れたけど、候補者の名前が並んでいた投票用紙のうえに確かにマルをしてきた」と話します。

気になったので、きょう市選管に問い合わせてみると「投票は候補者の名前を書く方式で、マルをするということはない」とのことでした。

投票案内のハガキは見つからないので行ったとも考えられるし、きのうは小雨が降り続いていたのに傘を使った形跡もありません。

投票に行ったとしたら、実際には名前を書いたのに何らかの記憶と混ざり合って「マルをした」と思い込んでいるのでしょうか。真相は闇のままです。

夢かうつつか

きょうも朝から小雨の一日です。きのうデイサービスセンターから帰って以来、ねえちゃはずっと鬱の状態がつづいています。

センターで特に何があった、というわけではなさそうですが「頭がふらふらして、何もやる気にならない」と、寝たり、起きたり、食べたり、を問答無用で、勝手にやっています。

大きく見て、1週間周期くらいで躁と鬱が交互にやってくるようです。晴れているときは比較的機嫌が良く、雨気味だと臥せったり家の中をうろついいます。

きょうは、市長選・市議補選の投票日ですが、私が昼ごろ「選挙に行った?」と聞くと、「ふらふらしていて、とても行けない」といいます。

ところが夜になると今度は、私が寝ている朝早く選挙に行って来たのだ、と昼とは正反対のことを言います。「誰に入れたの?」と聞くと「誰だかしらんけど、マルをした」のだとか。

果たして選挙へ行ったというのは、夢なのか、うつつなのか。ただ、選管から来ているはずの投票案内は見当たりません。
松井潤
matsuijun@jg8.so-net.ne.jp
  • ライブドアブログ