Aokijima

認知症と生きる「ねえちゃ」の近況と、アルツハイマー病に関する記録です

実行機能障害

厚生労働省の「認知症を理解する」というサイトを見ていたら、認知症の一つの症状として「実行機能障害」があると記されていました。

「スーパーマーケットで大根を見て、健康な人は冷蔵庫にあった油揚げと一緒にみそ汁を作ろうと考えます。認知症になると冷蔵庫の油揚げのことはすっかり忘れて、大根といっしょに油揚げを買ってしまいます。

ところが、いざ夕食の準備にとりかかると、さっき買ってきた大根も油揚げも頭から消えています。冷蔵庫を開けて目に入った別の野菜でみそ汁を作り、冷蔵庫に油揚げが二つと大根が残ります。

こういうことが幾度となく起こり冷蔵庫には同じ食材が並びます。認知症の人にとっては、ご飯を炊き、同時進行でおかずを作るのは至難の業です。

認知症になると計画を立てたり按配をしたりできなくなり、日常生活がうまく進まなくなります」

ここにあるような「冷蔵庫には同じ食材が並び」といった状態は、ねえちゃの場合、もはや日常的にごく当たり前です。

むしろ、たまにスーパーへ出かけていくとある意味“神業”と思えるくらい、冷蔵庫にすでにあるものばかりを買ってきます。

そしていまでは、「同時進行でおかずを作る」ことや「按配をしたり」といったことができない、というどころか、料理そのものがほとんど不可能なところにまできてしまいました。

ボケ顔

このあいだお医者さんのところへ行ったときトイレの鏡で自分の顔を見て、ねえちゃは「私、ボケ顔になったね」としみじみと言っていました。

認知症の病状の一つとして、顔に生気がなくなって能面のようになってしまう表情の変化があげられるそうです。

症状が進むと、物事を理解する力や感受性が鈍くなるなど認知機能が低下して、感情事態が乏しくなってしまう結果なのでしょう。

ねえちゃがボケ顔になったな、と私が感じたのは、5年前にお嫁さんの家族らと、松本・安曇野の温泉巡りをしたときの記念写真を見たときでした。

ねえちゃだけがカメラなぞお構いなしに、ボーッと無表情で、どこかこの世とはちがうところを眺めているように思われました。

もはやボケ顔を解消することはできないのでしょうが、きっと、積極的に話しかけるなどして少しでも喜怒哀楽を味わえるようにしてあげることが必要なのでしょう。
 

三連休の目標

三連休、といってもねえちゃにとって、特別にやることはありません。いつもと違うところもありません。ただ、休日なので、宅食が来ません。

でも、この間、お医者さんの帰りに買ってきた総菜やお菓子、バナナ、イチゴなどたくさんあるし、生協にたのんだ食品もだいぶ残っているので、外へ出なくても乗りこえられそうです。

ねえちゃは、むかしは整理が趣味、みたいなところがありました。いまも、台所やテーブルの周辺はきっちり片づけて寝ます。

ですが冷蔵庫の中や台所の戸棚には、萎びた果物や野菜、何年前に買ったか分からないような食品であふれかえっています。

「これとこれは消費期限が切れてだいぶたつから、捨てなければ」「これは冷蔵でなく冷凍室でなければダメだ」といった判断が、認知症が進むにつれてほとんど出来なくなってきました。

「連休中に、えい、やーと、これ食べれれないなと思うものを、みんな捨てて、整理する」。それを目標にしてはいるのですが……。

施設

朝から晩までパジャマ姿で家に居て「バカになって困る。やることがない」とボヤいていることが多いねえちゃ。

「それなら、しょうがない。老人ホームとか施設を見つけて、そこに移ろうか。そうすれば、食事もちゃんと用意してもらえるし、みんなといろいろやって楽しく暮らせるでしょ」

というと、「そうだね」といいながらも、いま一つ、乗り気ではなさそうです。

やっぱり、夫と長年住みなれたいまの家を出るのは、心残りなのでしょう。

それに、引っ込み思案なねえちゃにとって、施設で、みんなでカラオケを楽しんだリ、宴会をしたり、ということを想像すると、「とてもそんなことできない」と尻込みしてしまうのです。

とはいえ、いまは体が動くので何とかなっているものの、病状が進んだときのことを考えると、施設探しも本気で考えなければならない時期に来てるな、と感じます。

紙雛

朝、食卓へおりてくると、見慣れない置物が一対、棚のところに並べてあります。ようく見ると、底面が広い、円錐のかたちをした青と赤の紙雛のようです。

「どうしたのこれ」と、少し驚いてねえちゃに問いかけていくと、どうやら昨日、デイサービスセンターでもらってきたもののようです。

「みんなで作ったの?」。「そうじゃなかったと思う。終わった後、部屋から出たところでおみやげにもらってきた」と珍しく、記憶をさぐり出すことが成功しました。

平安時代には、白紙でつくられた紙雛が祓(はらえ)行事に用いられていたほか、「ひいな」とよばれる紙製人形の遊びもあったとか。

しだいにこれらに変化と技法を加えられ、江戸時代に入ると、雛段に飾られるようになったと見られています。

明治期までは雛段に立てて飾られていたようですが、内裏雛が流行するようになると紙雛は次第に衰えていったとか。

それでも、こうした手作り紙細工の技法は受け継がれ、姉様などの紙人形も生まれて発達しました。そして、いま、デイセンターでも作られているというわけです。

「今度行ったとき、作りかたも教わってきたら」と水を向けてみましたが、ねえちゃはいつものようにイマイチ積極的にはなれないようでした。

「ダメだ、ダメだ」

きょうは、だいぶ慣れてきたデイサービスの日です。

帰って来て「何か覚えていることない?」とねえちゃに聞くと、いつものように「お風呂に入った」ことくらいだといいます。

「カエデの実」のおやつ、とかめずらしいものも口にしたはずなのですが、いっこうに頭の中にとどまってはいないみたいです。

「だれかと話したの?」と聞いても、「とくに記憶がない」。真面目な性格なこともあって、言われたことをちゃんとこなすことで精いっぱいなようです。

だれと話しても、ねえちゃは「頭がおかしくて、ダメんなっちゃった。ダメだ、ダメだ」とときに泣きそうな口調で繰り返します。

以前は、謙遜のつもりで言っていたようですが、最近はホントにままならない苛立ちがこうした言葉になってあらわれてきているように思われます。

けれど、朝から晩まで「ダメだ、ダメだ」を繰り返したところで、生まれるものも、開かれてくるものは何もありません。

なにか話せば、いつも「ダメだ、ダメだ」しか返ってこないのでは、聞いてるほうも滅入ってくるばかりです。

命日

きょうは、薬を処方してもらっている脳神経外科に行く日。もう10回以上通っていますが、ねえちゃはいまだに、どこへ行っているのかよく分かっていません。

最近、好きだったお風呂をなんとなく敬遠するようになってきたように見えるねえちゃ。聞くと「浴槽でうとうとして沈んでしまいそうな恐れを感じるようになった」といいます。

お医者さんも「特に注意が必要なのは階段とお風呂。お風呂で、つまずいて骨折するケースもかなりある」といっていました。

きょうは夫の命日です。お医者さんの帰りにスーパーで、天ぷらや刺身、夫が好きだったエビ、それに花や、いろんなお菓子もたくさん買って帰りました。

仏壇に天ぷらを供えて、久しぶりにちょっぴり豪華な夕食となりました。

晩酌

ねえちゃはきょうも一日パジャマ姿。宅食や生協の受け取りをした以外は、テレビもつけずに何もやる気にならない状態がつづいています。

テレビもつけず、したがって御嶽海の、松鳳山を破っての春場所1勝目も目にすることなく終わりました。

ねえちゃは食欲は旺盛ですが、きょうはこれを食べたい、これを飲みたいというものがありません。「お酒は男の人が飲むもの」と、アルコールを口にすることも頑なに拒んできました。

6年前に83歳で他界した連れ合いは、晩酌を楽しみに生きていました。胃がんなど臓器の疾患はありましたが、認知症とは無縁でした。お酒の好きな11歳年上の実姉も、頭はしっかりしています。

もちろん飲み過ぎはいけませんが、少量の飲酒(ビールなら250ミリリットル、日本酒なら0.5合程度)は認知症のリスクが軽減される効果が期待できるそうですし、ホップ由来のビール苦味成分にはアルツハイマー病の進行を抑える作用があるという研究成果も出ました。

せっかく50年以上も夫婦をやっていたのに、二人でお酒を飲み交わすことが一度もなかったのか。と思うと、なんとなく寂しい感じもします。

もしもコップ1杯でもいいから連れ合いの晩酌に付き合っていたら、ねえちゃがこんなふうに認知症で苦しむことはなかったかもしれない。そんなふうにも、思われてきます。
 

初日

大相撲春場所が始まりました。久しぶりの日本人横綱誕生で、大阪はたいへんな盛り上がりのようです。

注目の新横綱、稀勢の里は豪風を押し出して、幸先のいい白星スタートを切りました。が、長野県期待の星、小結の御嶽海は、攻め込んだものの、横綱鶴竜に下手出し投げで惜しくも敗れました。

きょうも、ねえちゃは、朝からつぎつぎ記憶はとんでいって、やることも見い出せません。

「テレビで初日の観戦をして、その後で、相撲好きの“姉さま”のところへ久しぶりに電話でもしたら」と話してみても、それなりの返事はするものの、ぜんぜんそんな気にはならないようです。

けっきょく、テレビもつけず、午後6時前にひとりで勝手に冷蔵庫の残り物で夕飯。日記と血圧測定を済ませると、大好きだったはずの風呂へも浸からず、7時過ぎには消灯。

悪気はないのでしょうが、周りからみていると不可解で、無気力・無頓着な言動が、日に日に増えていきます。
 

台所用洗剤

2週間以上前から、ねえちゃは台所の洗剤が無くなったと騒いでいます。

「1週間後でよければ、生協に注文しておくよ」というと、「あした外へ出たついでに買って来るから」といいながら、忘れています。

一昨日、私がドラクストアに寄ったので「洗剤、まだ買ってなければついでに買ってくよ」と電話したときには「ある、ある」と言ってたのですが、何を勘違いしたのか実際にはありませんでした。

家にあるのは「フレッシュグリーン」という台所用合成洗剤です。福岡県のロケット石鹸という会社の製品ですが、どうも、もう新しい製品に置き換わっていて、この名の洗剤は売られてはいないようです。

ねえちゃは、だいぶ前に買ったこの製品の容器に、詰め替え用の他の洗剤を入れたり、水を入れたりして、食器洗いに使っていたようです。

「きょうこそは天気がいいので、スーパーへ寄って買って来る」と固い決意でいたのですが、けっきょく今日もパジャマで寝たり起きたりで外へ出ずじまい。

食器洗いの洗剤は、またまた持ち越しとなりました。
 
松井潤
matsuijunta@gmail.com
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