2019年05月17日

いちばんの薬

「いままでみなさんといっしょにおしゃべりしていて、いま部屋に帰ってきたとこ」。

きょうも夜8時少し前にねえちゃから電話がありました。

夜の電話で、そう話し出すときはたいてい、明るく穏やかにしています。

が、部屋で一人になってから寝付けなくなったりすると「おばあさん、ここに居ていいの?」とやや鬱気味の声になって電話をしてきます。

アルツハイマー病は不治の病。少しずつ進行していかざるを得ないのでしょうが、ねえちゃにとって、グループホームでみんなで話しているときが、いちばんの薬、いちばんの幸せのようです。


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2019年05月16日

勝率2分7厘

期待を集めていたエーザイと米バイオジェンのアルツハイマー病新薬候補「アデュカヌマブ」の治験も、この3月、突如中止に追い込まれ、頓挫してしまいました。

米国研究製薬工業協会によると、1998年から2017年までに承認された新薬はわずかに四つだけ。失敗した治験の数は146にのぼるのだそうです。

4勝146敗。勝率2分7厘。プロ野球だったらとっくに戦力外通告を受けている、惨憺たる結果です。

アデュカヌマブの初期の治験では、アルツハイマー病と関連があるとされる蛋白、アミロイドベータを脳内から減少させる結果を出し、2016年には英科学誌ネイチャーの表紙を飾りました。

それでも「薬」の誕生、というところまで行きつけなかったのです。

薬に頼らずに、どう病気と共存していくか。模索の時代が、まだまだつづいていくのです。


2019年05月15日

ちょっと風邪

グループホームの生活記録によれば、先月26日、お医者さんの往診で「どこも悪いところはないです。頭がパーおばかさんで」と笑っていたねえちゃですが、その直後からちょっと体調を崩したようです。

27日には、風邪をひいたのか、咳込んで鼻声になったのでマスクを着用。自室で食事をとるなどするようになりました。

みぞおちのあたりが痛んだり、といったことはあったようですが、体温や血圧などに異常はなし。ちゃんと管理してもらったおかげで大したことはなく、2、3日で治ったようです。

いつもならみんなといっしょなのに、一人でいると不安になるようで、そういえば、このときの2、3日間は、私のところへひっきりなしに電話がかかって来ていました。


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2019年05月14日

ハワイアン

生活記録によると、4月18日の午後には、大正琴のボランティアがグループホームを来訪。

マイクを渡されると、照れながらもちゃんと歌っていたそうです。

さらに20日には、ハワイアン音楽のボランティアがグループホームへ。

黄緑色の首飾りをかけてもらって、ハワイのメロディに合わせてフラダンスを満喫。

最後に、代表して「楽しい時間を本当にありがとうございます」と感激で涙ぐんであいさつしたのだとか。

なにもかも次々、忘れていくねえちゃですが、瞬間、瞬間を心ときめかせて生きているようです。


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2019年05月13日

古戦場

4月の生活記録によれば、4月12日には、向かいの理容室へ散髪に。短めにして「サッパリした」とご機嫌だったようです。

18日には、川中島古戦場を希望して、お花見に行っています。

信玄と謙信が対決する像のある川中島古戦場は、ねえちゃの家の近くにあります。

というか、かつて合戦が繰り広げられた一角に家があるといったほうがいいかもしれません。

が、景色などの記憶はあまりよみがえっては来なかったようです。

古戦場はかなり賑わっていたようで、ベビーカーの子どもを見て「可愛いね」。

マクドナルドで買ったカフェオレを、「おいしい」と飲んでいたそうです。


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2019年05月12日

麦わら帽子をかぶって

グループホームから、ねえちゃの4月分の生活記録がとどきました。

2日
新元号の会話で盛り上がる。「いい元号だよね」。全体往診があって胸部音OK。先生の問診に「どこも悪いところありません」。

5日
麦わら帽子をかぶって、ベランダで花植え。天気が良かったので少し日焼け。「とても楽しかった」と喜んでいた。

6日
車で買い物に出かける。車中でなんども「嬉しいね~」といってはしゃいでいた。

春がやって来て、活動的になって、ねえちゃも、その瞬間瞬間を、楽しんでいるようです。


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2019年05月11日

低出力パルス波超音波

いまだ確かな治療法がないアルツハイマー病ですが、いろんな方法で治療が試みられています。

東北大学では、低出力パルス波超音波(LIPUS)が、マウスのアルツハイマー型認知症モデルで認知機能低下を抑制する可能性があることを見つけ、臨床試験に入っているとか。

超音波は、人間の可聴域を超える周波数(20kHz以上)を持った音波。連続的に音波を発信し続ける連続波に対し、パルス波は断続的に音波を発して照射します。

これを使えば、生体内の機械的振動によって生じる熱の発生を抑えられるため高い強度での照射が可能になります。

同大学の研究グループでは、低出力パルス波超音波を全脳に照射すると、認知機能低下が抑制される可能性があることを2種類の認知症モデルマウスにおいて確認しました。

また、アルツハイマー型認知症の動物モデルでは、アミロイドβの蓄積を著明に減少させていることもわかりました。

そこで、安全性を評価したうえで、患者40人を対象に有効性を確かめる治験治療を開始。治験は3カ月ごとに行い、全観察期間は18カ月だそうです。


2019年05月10日

プレセニリン遺伝子群

家族性アルツハイマー病にかかわる第三、第四の遺伝子、「プレセニリン1(PS1)」、「プレセニリン2(PS2)」は、1990年代に相次いで同定されました。

特に14番目の染色体にあるプレセニリン1は、アルツハイマー病の普遍的な原因遺伝子という見方もあります。

仲間の遺伝子がほかに数十種類存在すると推測されています。

こうしたプレセニリン遺伝子群の変異によって、βアミロイド蛋白の代謝異常が起こり、アルツハイマー病が発症すると考えらます。

また、プレセニリン1やプレセニリン2の変異は、この蛋白の蓄積を促して老人斑を形成させるほか、神経細胞のアポトーシス(プログラムされた細胞死)にもかかわりがあるようです。


2019年05月09日

アポリポ蛋白E4遺伝子

アルツハイマー病の遺伝因子として2番目に突き止められたのは、19番染色体の「アポリポ蛋白E4遺伝子」でした。

きのう見た「βアミロイド蛋白前駆体(APP)遺伝子」の異常は、それがあれば必ずアルツハイマー病になるという意味での原因ですが、こちらは原因というよりも、むしろアルツハイマー病になりやすい危険因子とみることができます。

「アポリポ蛋白E4遺伝子」は、脳で脂質の運搬や組織の修復にかかわっている蛋白で、老人斑や神経原繊維のなかに存在していることがわかっていました。

これをもとに、米国デューク大学の研究者らが、アポリポ蛋白Eのアミノ酸配列が一つずつ異なる多型のうちでE4タイプを作り出す遺伝子をもっていると遅発型の家族性アルツハイマー病になりやすいことを明らかにしたのです。

さらに、大多数のアルツハイマー病患者が含まれる遅発型孤発性アルツハイマー病についても、E4タイプのアポリポ蛋白E遺伝子を二つ持っている人、一つ持つ人、持っていない人では、アルツハイマー病の発病年齢に差があることも見出しました。

つまり、一般のアルツハイマー病でも危険因子であると考えられるわけです。ただし、論文に発表されたデータはサンプルに偏りがあり、より大きな集団による疫学調査では、その危険度はそれほど強いものではないことも分かったそうです。


2019年05月08日

APP遺伝子

1980年代からの研究で、家族性アルツハイマー病にかかわる遺伝子には、おおよそ四つのタイプがあり、それぞれ別の染色体上にあることがわかってきました。

その一つが、老人斑の主成分であるβアミロイド蛋白の「前駆体(APP)遺伝子」です。1991年の英国の生化学者ハーディーらの報告などで、「21番染色体」に異常をもつ家族性アルツハイマー病の原因遺伝子が、このAPP遺伝子であることが明らかになったのです。

もともとアルツハイマー病と似た脳の病態を示すダウン症は、この21番染色体が、通常2本のところが3本になるという染色体異常が原因で起こります。

アルツハイマー病の脳の組織には、特徴的な2種類の構造物があります。一つは老人斑、もう一つは神経原線維変化と呼ばれるものです。

このうち老人斑は、アルツハイマー病の脳のほか、ダウン症の脳に多く見られます。そのダウン症の脳の研究から、老人斑と神経原線維変化のうち、老人斑が時間的に早く生じることも分かりました。

そこで、老人斑がアルツハイマー病の原因ではないかという考えが強まり、ならば、主成分であるβアミロイド蛋白のもとになるAPPの遺伝子に異常が起こったに違いない、とハーディたちは考えたのでした。

患者のDNA内の突然変異をしらみつぶしに調べた結果、APPの遺伝子のアミノ酸たった一つの変化が、アルツハイマー病の発症と関係していることが分かったのです。



2019年05月07日

原因遺伝子

アルツハイマーは、一度発達した知的機能が、脳へのアミロイドベータ(Aβ)タンパクとタウ(tau)タンパクの蓄積に伴い、ゆっくりと障害されていく病気、と現在ではふつう定義されています。

先天的要因である個々人の遺伝情報と、後天的な環境要因が複雑に絡み合って発症します。そういう意味ではありふれた病ですが、加齢が最大のリスクファクターとなるという大きな特徴があります。

遺伝子については、変異の頻度は低いものの疾患寄与率が極めて高い原因遺伝子や、頻度は高いが疾患寄与率の低い感受性遺伝子など、いろんなものが同定されてきています。

未知の原因遺伝子を発見するための遺伝子解析がしやすい遺伝性アルツハイマー病の患者家系は、日本ではほとんどなく、世界でもごく限られているそうです。

そうした限られた患者家系について、特定の配列の遺伝子を持っていることとアルツハイマー病発病との相関関係を調べる分子レベルの疫学研究が行われて、1980年代から染色体における遺伝子のおおまかな位置が分かるようになったのです。


2019年05月06日

スパイダーマン

認知症を患って、家を抜け出して徘徊することはよくあります。が、中国では、アルツハイマー病の高齢女性が、スパイダーマンのように高層マンションの外壁を伝って降りたのだそうです。

先月25日の午前中のこと。四川省成都市大邑県で、高層マンションの14階に住む高齢女性が、外壁の換気用シャフトが設置されている格子をハシゴ代わりにして降りる姿が目撃されたのだとか。

いっしょに暮らす家族は、その日、外出中に家を出ないように鍵をかけていたそうですが、女性はトイレの窓から抜け出してしまいました。

群衆が見守るなか女性が4階に達したところで、幸い、この階の住人が女性を窓から引き寄せてレスキュー隊が到着する前に無事救助されたそうです。

10連休の最終日の夜、いまのところ、こんなアクロバティックなのとは無縁なねえちゃからかかって来た電話は、最近になく穏やかで落ち着いていました。


2019年05月05日

朝と夜

日曜日のきょうはいつものように、日課になっている夜のほかに、朝にもねえちゃから電話がありました。

ゴールデンウィーク中なので、特に日曜日だから、ということもなさそうなのですが。不思議です。

ねえちゃの10連休は、家族や親せきが訪ねてきたり、旬のタケノコが送られてきたり、けっこう忙しかったはずです。

でも、そうした出来事のほとんどは、そしてゴールデンウィークであることも、すぐに頭から消えて行ってしまっています。

「えっ。そうだったの。みんな忘れちまってる。バカになるばっか、どうなっちゃうんだろ」と、夜には落ち込むこともありますが、朝の電話はたいてい清々しく、明るい声をしています。


harutoshura at 12:44|PermalinkComments(0)ねえちゃの近況 

2019年05月04日

タケノコ?

ねえちゃのグループホームのある長野市街のきょうは、雲ひとつない、五月晴れ。

通りが鮮やかな花々で彩られる恒例の「善光寺花回廊ながの花フェスタ2019」が開かれているそうです。

昨夜、親せきから「ねえちゃのところへタケノコを送ったから」という電話がありました。

でも、きょう、お昼寝の途中で起きのか、午後2時少し過ぎてからかかってきたねえちゃの電話の声は、いまいち浮かない様子でした。

「タケノコとどいた?」。「えっ~、タケノコ。そんなの届いたのかな。とにかく、バカになっちゃって。職員のひとに聞いてみるだね」。


harutoshura at 14:38|PermalinkComments(0)ねえちゃの近況 

2019年05月03日

「アデュカヌマブ」断念

実用化間近と期待されていた「アデュカヌマブ」というアルツハイマー病治療薬の臨床試験が中止になりました。

アデュカヌマブは、エーザイと米国の製薬企業バイオジェンが共同で開発を進めていた、「抗アミロイドβ抗体」と呼ばれる化合物の一つです。

アルツハイマー病は、脳内に「アミロイドβ」という物質等がたまり、それらが神経細胞を破壊することで起こると考えられています。

そこで、アミロイドβを取り除けば根治につながるのではないかと、開発が進められているのが抗アミロイドβ抗体です。

アデュカヌマブは、最終段階の第Ⅲ相試験まで来ていました。しかし、認知機能の低下抑制効果などの主要評価項目を、クリアすることができないと判断されたようです。

2012年にには抗アミロイドβ抗体「バピネオズマブ」(米ファイザー)が第Ⅲ相試験で開発を断念。16年には軽度のアルツハイマー病患者を対象に開発を進めていた「ソラネズマブ」(米イーライリリー)が承認申請を取りやめました。

アルツハイマー病治療薬の開発は、残念ながら苦戦をつづけています。


2019年05月02日

「LATE」という認知症

これまでアルツハイマー病と診断された中に、別の種類の認知症患者が多く含まれているという国際研究チームによる衝撃的な論文が「ブレイン」という有力な医学誌に発表されたそうです。

その認知症というのは、「LATE」(Limbic-predominant age-related TDP-43 encephalopathy、大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症)という病気で、アルツハイマーと似ているが異なるといいます。

アルツハイマーが、アミロイドなどのたんぱく質に関連するとされる一方で、LATEは「TDP-43」と呼ばれるたんぱく質に由来して発症するそうで、アルツハイマーに比べ、より緩やかに記憶が失われていくとみられています。

研究は、認知症患者の死後解剖の結果を基にしたもので、LATEは80歳以上が罹患し、この年齢の5人に1人の割合で症状が確認されたとか。

アルツハイマー型と診断された患者の最大で3分の1が実際はLATEである可能性があり、また、アルツハイマー型とLATEは併発するケースもあるそうです。

ひょっとすると、これまでの認知症の常識を大きく変えていく発見になるのかもしれません。


2019年05月01日

平成から令和へ

昨夜のねえちゃから電話で、「きょうで、平成は終わりなんだよ」と聞いてみました。

グループホームでも当然話題になっているので、なんとなくは分かっているのでしょうが、いま一つピンときてはいないようでした。

「えっ、そうなんだ。あしたから、じゃあ、どうなるの?」

「令和という年号になるんだって。皇太子さまが、天皇陛下になるんだよ」

「あ~、そうなんだ」

「元号の変わる瞬間を、テレビで見ときなよ。もう二度と見られないかもしれないからね」

「わかった。そうする」

平成最後の夜は、穏やかに床につきました。ねえちゃは昭和11年生まれ。長かった昭和につづいて、平成、令和と3つの時代を生きていきます。


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2019年04月30日

タキシフォリン

ポリフェノールの一種「タキシフォリン」に、アルツハイマー病に関係する異常なたんぱく質の蓄積を抑える効果があることが、マウスの実験で分かったそうです。

アルツハイマー病は、アミロイド・ベータというたんぱく質が、脳内にたまることによって発症すると考えられています。

国立病院機構京都医療センターなどの研究チームは、脳にアミロイド・ベータがたまるマウスに、発症する前から13カ月間、1日200ミリグラムのタキシフォリンをえさに混ぜて与えました。

その結果、ふつうのえさを与えたマウスと比べ、脳内のアミロイドβの蓄積や炎症を起こす細胞の数が半分以下に抑えられ、認知機能も健康なマウスと変わらなったそうです。

タキシフォリンは、果物、野菜、ワイン、茶、ココアなど、植物由来のいろんな食物に含まれていて、多くの種類の癌細胞の抑制効果を示すことでも知られています。


2019年04月29日

噴出

きのう日曜日のねえちゃからの電話は、けきょく1日で11回にも及びました。

風邪気味で、グループホームの自室に一人で長いこといたためか、不安感・孤独感がつのったのでしょうか。

同じところにいても、状況が少し変わるだけで、たちまち心のバランスを保つのが難しくなってします。

認知症をわずらって分らないこと、できないことが増え、自分の根本のところで、強い不安や恐れ、混乱を抱えています。

みんなとおしゃべりして気を紛らわせていられるときはいいのですが、一人になってふと我に返ると、そうした不安や恐れが一気に噴出してくるのでしょう。


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2019年04月28日

電話5回

連休2日目のきょう、午前中だけでねえちゃから5回、電話がありました。

声の様子からも風邪気味なので、きっとグループホームで、自分の個室で安静にするように配慮されているからのように思われます。

ひとりでいると「バカになっちゃって、何が何だかわからない」ということになって、同じ不安が沸いては忘れての繰り返しになるようです。

グループホームで、みんなと夢中に話している時間が、いかに“心の平安”の役に立っているかがうかがわれます。

だれしも、人に支えられて生きています。とりわけ認知症のねえちゃにとっては、みんなといっしょに暮らす意味あいが大きそうです。


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2019年04月27日

風邪気味

あれだけ「記憶」に難のあるねえちゃですが、相変わらず、寝る前の午後8時ごろには忘れずに必ず、私のところへ電話を掛けてきます。

それから、週一回、なぜか、決まって日曜日の朝8時ごろにも電話をくれるのが常でした。

が、その「週一回」が、最近は日曜日ではなくて土曜日のことが多くなって来ています。からだの中にある体内時計が、進むか遅れるかしてきたためでしょうか?。

連休初日の土曜日の今朝も、電話が掛かってきて起こされました。

「朝ごはん、済んだの?」

「うん。いまみんなと食べてきた。風邪気味だから、これからちょっと寝る」

そういえば、声もちょっぴりいつもと違うように思われます。

「熱はあるの?」「ん~ん。無い」

「じゃ、ゆっくり休みな!」「そうする。じゃあね」


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2019年04月26日

電柱・支線類敷地料

ねえちゃの家に、「電柱・支線類敷地料お支払い」に関する書類が電力会社から届いていました。

亡き夫とずいぶん前に購入してそのままにしてある土地に設置されている電柱の敷地料が支払われる、というお知らせでした。

認知症のねえちゃに代わって整理しておかなければならない要件がまだけっこう残っています。少しずつ片付けていくしかありません。

でも、ほかには、これといった郵便物もなく、留守番電話もなくなりました。

だいぶ古くなっては来ましたが、いまのところねえちゃの自宅も健在です。


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2019年04月25日

春らんまん

20日ぶりに、ねえちゃのところを訪ねました。

グループホームのみんなと、食堂でガヤガヤ、楽しそうにしていました。

部屋では、いつものように足をバタバタさせて、歓迎してくれました。

「何か困ったことはない?」と聞くと、「ない。アタマだけ」といつものように答えていました。

「どこか、行きたいとことかない?」と聞くと、「ここにいられれば、十分」と言っていました。

けっこういまが幸せそうでした。

先日、ねえちゃの甥から「連休中にねえちゃを訪ねてみようと思ってるんだけど」と、電話をもらいました。

インフルエンザを警戒しなければならない季節が過ぎて、グループホームにも、春らんまんの開放的な雰囲気が感じられました。


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2019年04月24日

全体往診

ねえちゃは毎月、担当のお医者さんからグループホームで全体往診を受けています。

3月は、胸部音OK。先生の質問に「おかげさまです」としっかり答えていたそうです。

2月も胸部音OK。問題なく、先生と「今年は雪が少ない」といった雑談を楽しむ余裕もあったとか。

1月も、先生の質問に「どこも悪いところは無いです」と答えていたといいます。

「アタマ」以外は、いまのところ、いたって健康なようです。

とはいえ、当然のごとく、定期的にお医者さんに診てもらっていることはもちろん、毎日薬を飲んでいることも、すっかり忘れてしまっています。


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2019年04月23日

ミョウガ

ゴールデンウィークが近づいて、日に日に暖かさも増してきているように思います。

暖かくなると、冷奴やそうめん、刺身のつまなどに欠かせないのがミョウガ。

グループホームでも、春の食べ物が話題になったとき、ねえちゃは「ミョウガを漬けたりした」と思い出を述べたそうです。

ミョウガというと、俗に、食べると物忘れがひどくなると言われます。

落語にも、宿屋の夫婦が預かった金のことを忘れさせようと飛脚にミョウガを食べさせる「茗荷宿」という噺があります。

けれど、それはまったくの迷信のようです。

ミョウガには、ビタミン、ミネラル、精油、辛み成分などが含まれています。

中でもカリウムが多いのが特徴で、体内のナトリウムを排出して高血圧を予防したりする働きもあるそうです。

ミョウガの香り成分には、集中力を増す効果があることもわかっているとか。

認知症のねえちゃにも、思い出のミョウガは、体や頭にいい働きをしてくれるかもしれません。


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2019年04月22日

「困ったもんだねぇ」

ふつうの高齢者だったら、身体の不調や痛みなどを自分の言葉で表現することができます。

しかし、認知症になると、そうした症状を自分の言葉で訴えることが難しくなってきます。

落ち着きがなく歩き回っている原因が便秘で、便秘が解消されると落ち着いてきたり、また、歩行がおぼつかない原因が足の小指の骨折だった、といった事例もあるそうです。

認知症になると、うまく言葉で表現できず、行動で訴えることもあるわけです。

ですから、周りのものも、十分に観察して細やかなケアをする必要があるのでしょうが、それはなかなか難しいことです。

昨夜、「何か、おかしい。あした起きたら死んでるかも」とちょっぴり驚きの言葉を発していたねえちゃも、きっと、そう思う原因が何かあったのでしょう。

私にはそれを知る術も、洞察力もありません。が、今夜の電話では「ええっ、おばあさんそんなこと言ったの。困ったもんだねぇ」と、まるで他人事。

何かいいことでもあったのか、昨夜とは打って変わってご機嫌な様子で床に着きました。


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2019年04月21日

「あした起きたら……」

「ホント、アタマおかしくなっちゃって。何か、おかしい。あした起きたら死んでるかもしれない」

午後8時ごろかかってきた今夜の電話で、ねえちゃは、不安そうにそんなことを口にしていました。

「胸が苦しいとか、どこかが痛いとか、どこかおかしいところがあるの?」と聞くと、「そんなことない」といいます。

「バカんなっちゃったっていったって、いつものように電話をちゃんと掛けてこれたし、日記も書いたみたいだし、ちゃんとやることやってるじゃない」

「だけど、アタマおかしくなっちゃって……」

「何か、起きたらどう対応するか、ちゃんとスタッフの人と話してあるから大丈夫。あしたのことは、あしたのこと。とりあえず、寝たら」

「ん~。じゃあそうする。おやすみ」「おやすみ」


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2019年04月20日

喪失体験

高齢になると、若いときのように何かを得るということがだんだん少なくなって、失うものが多くなっていきます。

社会的地位や収入、役割、生きがい、知人や友人、親兄弟など、喪失体験が増えていきます。

ねえちゃも8年前、苦楽をともにし、また、いろんな意味で手がかかった連れ合いを失い、いまから思うと相当に大きな喪失感を味わいました。

多くの喪失体験をしている高齢者が、心穏やかに、それに応じた生活を送っていくことは、想像以上に難しいようです。

そして、認知症は、さらに多くのものを喪失させることになります。

いままで何をしていたかが思い出せないということは、「記憶に対する喪失体験」です。たとえ家族に囲まれていても、それが知らない人に思えたときは、喪失体験として感じられることになります。

自分の家にいても、自分の家でないと感じたときには、居場所を失うことになります。

ねえちゃが、いまさっきまでグループホームでみんなと楽しく話していても、自分の部屋にもどって一人になって「はて、ここはどこだ」と思い返した瞬間には、きっと、居たたまれない喪失感が襲ってくるのでしょう。


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2019年04月19日

性格の変化

「がんこ」「柔軟性がない」「しつこい」など、あたかも高齢者独自の性格があるかのように考えられることがよくあります。

けれど、子どもでもがんこな人もいれば、柔軟性のない若者もいます。しつこい大人もいます。ねえちゃは高齢者ですが、特にこれら三つにあてはまるようには思えません。

高齢者だから特別な性格と考えるのは間違えでしょう。同じように、認知症だから特別な性格があるというようにも思われません。

ただ、前頭側頭型認知症のように、脳の障害が原因で自分の欲求を抑えることができなくなる「抑制の欠如」などの人格変化が起こる場合はあるようです。

しかし通常、認知症になった人の性格が変化するのは、もともとの性格に「もの忘れ」「見当識障害」「判断力障害」「実行機能障害」など認知症の中核症状の影響が加わることによって起こると考えるべきなのでしょう。

ねえちゃのように、もともと穏やかだった人が攻撃的になったり、興奮するようになったとしたら、認知症がその人の生活に影響を与えたということになるのでしょう。

が、グループホームへ入ってからのねえちゃは、しばしば不安を訴えることはあっても、攻撃的になったり、興奮が収まらなくということはなくなりました。家族にとって、それが救いになっています。


2019年04月18日

1年1カ月

ねえちゃがグループホームへ入ってから、きょうでちょうど1年1カ月になります。

自宅からグループホームへ移った経緯はすっかり忘れてしまっているので、「どうしてこちらでお世話になってるんでしたっけ?」といった質問をスタッフのかたにもしばしばするようです。

きのうの夜の電話でもまた、「もう、1年と1カ月だね」と言うと、「そんなに居るの~!」といつものようにビックリ仰天していました。

それでも、この間「自宅へ帰りたい」と駄々をこねるようなことは一度もありませんでした。むしろ、自宅で一人で生活していたときの“寂しさ”への恐れのほうがずっと強いように思われます。

グループホームへ移った経緯を聞かれて、スタッフのかたが説明すると、納得して、不満を口にしたり興奮したりすることもなく、穏やかに対応しているそうです。

昨夜も「グループホームが、おばあさんの家なんだからね」というと、安心したように「ここで楽しくやるだ」と言って床につきました。


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2019年04月17日

桜前線

ねえちゃが住む長野市にも、桜前線が到来しました。

長野地方気象台が長野市の開花を宣言したのは13日。4月に入って気温が比較的低い日が続いたため、昨年より11日遅くなったとか。

ねえちゃのグループホームでも“お花見”的な行事が予定されているようですが、「お花見した?」とねえちゃに聞いてもチンプンカンプンです。

きのうの夜は、「おばあさん、バカになって、何が何だかわからなくなっちゃって、困ったよ~」と、なんだか元気がありませんでした。

それでも、「バカになったおかげで、くよくよ悩まなくてすむじゃない。幸せだよ」とか何とか話していると、気持ちが盛り返してきたらしく「じゃあ寝る!おやすみ~」。


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2019年04月16日

「10連休」はお休み?

いつものように昨晩も、寝る前にねえちゃから電話がかかってきて、穏やかに「おやすみ」。

をしたかと思ったら、5分後には「おばあさん、どこに居るの! ここに居ていいの!」と慌てた口調でまた電話がありました。

「そこが、おばあさんの家。もう一年以上いるんだから」というと、いつものように「え~。もうそんなに居るの!」と驚愕しています。

先月末、天皇陛下のご退位で、ゴールデンウィークは10連休になるというニュースが流れると、グループホームでねえちゃは「そうなの。じゃあ、ここも休みになっちゃうの?」と心配していたとか。

スタッフの人が「ここはお休みがありません」と説明すると、「良かった~。また、家で一人になっちゃうと思った」と、ほっとしていたそうです。

頭での認識がどうなっているかはともかく、ねえちゃの体と感性のほうはもうとっくに、1年以上暮らしたこのグループホームが「自分の家」になっているようです。


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2019年04月15日

おはぎ作り

ねえちゃの介護サービス計画には「できる事はお手伝いしながら、不安なく、ここでの生活を楽しみたい」とあります。

実際、グループホームでは、あれこれ「お手伝い」をまかされて、それなりにやりがいを感じているようです。

3月2日には、信州ならではのおやつ、こねつけに付ける味噌作りのお手伝い。「私の味覚でいいのかなあ?」

3月11日には、洗濯干し、さらには、ほつれたズボンの裾をじょうずに縫い合わせました。

3月21日には、お彼岸のおはぎ作りに参加。「疲れたら交代するよ」と声をかけあってみんなで協力しながらくるみ味噌のくるみをすり鉢ですり、もち米の中に上手にあんこを入れて丸めていたそうです。


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2019年04月14日

啓蟄

インフルエンザの警戒で、3月はグループホームの中で退屈していたのかな、というと、ぜんぜんそうではなかったことが、生活記録を見ると分かります。

3月6日の夕食後、ねえちゃは日記を書きながら「今日は二十四節気で虫が土から這い出てくる日なんだよ」とスタッフのかたに教えてあげたそうです。

3月9日には、日差しが良かったので、窓に背を向けてみんなが一列に座って日光浴。その際、春のうたを歌いながらボール渡しをして、止まったところで連れ合いの名前を言うゲームをしたそうです。

ねえちゃのところに来ると、すぐに「イズミです」と名前が出てきて、「やさしくておとなしい人でした」と答えたとか。

「やさしくておとなし」かったかどうかは、私にはやや疑問が残りますが。

昨晩、ねえちゃから電話がかかってきたとき「いろんなことあって、楽しくやってるみたいじない?」と聞くと、やっぱりみんな忘れていました。


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2019年04月13日

ひな祭り

ねえちゃの3月の生活記録が、グループホームからとどきました。

それによると、3月3日には「ひな祭り」の行事に参加させてもらったようです。

「カップ寿司作り」では、ねえちゃは、錦糸卵や桜田麩(でんぶ)をじょうずに広げて作っていたそうです。

また、「桜もち風のオムレット作り」では、あんこを丸めたり、ホットプレートで焼けたオムレットを「できるかな」と心配しながらひっくり返したり……。

おやつのときは、「おいしい」と、甘酒をおかわりしていたとか。“老春”を、のびのび、楽しんでいるようです。


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2019年04月12日

人員配置

グループホーム介護職員の人員はというと、共同生活住居ごとに常勤換算で、「利用者:介護職員=3:1」以上の比率で配置することとされます。

なお、夜間(午後6時~10時)と深夜(午後10時~午前6時)の時間帯は、利用者の人数に関わらず「通常の(宿直勤務ではない)勤務者」を常時ユニットごとに1人以上配置する必要があります。

共同生活住居ごとに、認知症介護の経験3年以上で、厚生労働省指定の研修を受けた専従の常勤管理者及び計画作成担当者を配置する必要があります。

計画作成担当者のうち少なくとも1人はケアマネージャーでなりません。また、利用者に支障が無い場合には、常勤管理者と計画作成担当者の兼務が認められます。

計画作成担当者というのは、ケアプランを考え、作成して、利用者と家族に提供するケアサービスを説明・提案するのが仕事。利用者やご家族とスタッフとの橋渡しの役目を担っています。

こうした人たちが、いつも近くにいてくれる安心感が、グループホームへ入ってからの、ねえちゃの“こころの安定”につながっているのだと思います。


2019年04月11日

1ユニット9人まで

これまで、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の制度化に取り組んだ建築家、外山義さんのグループホームに対する業績や考えかたを見てきました。

それでは、こうして成長してきたいまのグループホームは、制度的にどういうものになっているのかか、このあたりで要点を整理しておくことにしましょう。

まず、グループホームとは何かというと、認知症の高齢者に対し、共同生活住居の家庭的な環境と地域住民との交流のもとで、入浴・排せつ・食事の介護など日常生活上の世話や機能訓練を行い、能力に応じて自立した日常生活を営めるようにするところ、ということになります。

ただ、認知症が原因で著しい精神症状(または行動異常)を呈する人や、認知症の原因となる病気が急性の状態にある場合は、原則としてその治療を優先される必要があるため認知症対応型共同生活介護を受けることが出来ません。

ねえちゃは、アルツハイマー病以外にこれといった「急性の状態」の病気を抱えているわけではありませんから、ここには含まれないことになります。

実際のグループホームの運営は、1事業所あたり1つまたは2つの共同生活住居(ユニット)を運営できることになっていて、1ユニットの定員は5人以上9人以下と決められています。

ねえちゃのグループホームは平屋で、9人ずつ2つのユニットがタテにつながっています。因みに、ねえちゃは「あさま棟」というユニットで暮らしています。

居室、居間、食堂、台所、浴室、事務室、面談室など必要な設備を有し、居室は原則として個室とし、床面積が7.43㎡以上(和室の場合は4.5畳以上)あること、とされています。

ねえちゃの部屋も個室。面会にいってもゆっくりできる、十分なスペースがあります。

グループホームは、主治医から認知症の診断を受けた利用者が、衣食住の費用については全額自己負担、介護サービスに対してだけ1割自己負担(定額制)の介護保険を利用することになっています。


2019年04月10日

季節はずれ

南岸低気圧と強い寒気が流れ込んだ影響で、ねえちゃの住む長野県のきょうは、中部や南部を中心に季節外れの大雪となりました。

10日正午現在の12時間降雪量は、開田高原と軽井沢で14センチ、菅平11センチ。軽井沢町の有料道路「白糸ハイランドウェイ」の一部区間は積雪で全面通行止めとなったとか。

長野地方気象台は、4月としては、県内では1998年以来の大雪警報を出したそうです。

いつものように、きょうも寝る前にねえちゃから電話が掛かってきたので「雪どうなの?」と聞いてみると、「えぇっ。そうなんだ」と、ひとごとの様子。

長野市街では、未明にみぞれになった程度で、雨模様の一日だったようです。

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2019年04月09日

「施設」を「住まい」に

途切れ途切れになりましたが、スウェーデンに学び、日本のグループホームの制度化に大きな貢献をした建築家、外山義さん(1950-2002)のグループホームに対する考え方をこれまでみてきました。

外山さんの、グループホームをはじめ、寝たきりゼロ作戦、特別老人ホームの個室化などへの取り組みは、高齢者施設を「施設」ではなく、「住まい」に変えようとするものでした。

自著『自宅でない在宅』の完成を見ることなく、52歳の若さで世を去った外山教授。「あとがきに代えて」で、お弟子さんが次のように記しています。

「先生の研究の特色は、工学が最も苦手とする人間性の問題に正面から向かい会おうとする点にあり、その出発点には信仰があったと確信しています。ともすると人間性なき科学が幅を利かせるなかで、あるべき姿を追求された先生。その志を受け継ぎ、蒔かれた種を大きく育てることが私たちに託された使命であり、先生への追悼といえます」。

グループホームから毎晩電話をかけてくるねえちゃは、このごろよく「ここがおばあさんのウチなんだね!」と、確信めいたような口調で繰り返すようになってきました。

ねえちゃにとってもグループホームが、外山さんのいう「住まい」として感じられるようになりつつあるのかな、という気がしています。


2019年04月08日

そろそろ髪切ろうか

ねえちゃのグループホームの門のすぐ前には、親身に協力してくれる理髪店があって、ねえちゃもしばしばお世話になっています。

インフルエンザの警戒で、この冬、外出を控えていたねえちゃの髪も、だいぶ長くなってきました。

このあいだ訪ねたときも、ホームのスタッフの人と「そろそろ髪を切りに行こうか」と話していました。

外山さんは、グループホームと地域との脈略をつなげるためには、家族の自由な訪問ができることはもちろん、地域の人びとがさまざまなかたちでグループホームを訪ねてきてくれる機会をつくり出す一方で、入居者自身も地域の一員として老人会に参加したり、地域の居酒屋やカラオケを訪ねたりといった積極的な外出も望まれる、と考えていました。

「このように地域との双方向の交流が日常的に成り立っていれば、入居者の捜索をせねばならない事態が発生したときなどでも、地域からの自然な協力を得ることができるだろう」と外山さんは記しています。


2019年04月07日

地域のなかに立地する

高齢者の「施設」というと、以前の私は、街はずれの丘の上とか人里離れた山奥とかにある、というイメージを抱いていました。

しかし、ねえちゃのグループホームにしても、長野駅から歩いていけるほどの距離にあり、自宅に居たときよりもずっと街中で生活することになりました。

このようなグループホームの立地環境の問題について、外山さんは「小規模であるがゆえの危険」として、次のように指摘しています。

「利用者にとっての生活の広がりが小規模なグループホーム内で完結してしまうと、利用者の生活の質はグループホーム内の人的・物理的環境の質によって完全に左右されてしまうおそれがある。

仮にその質が良質ではなく、あるいは不十分である場合、そこに生活する高齢者にとっては逃げ場のないマイナスの状況が生まれてしまう。

その意味において、グループホームにとって外部、すなわち地域とのつながりがきわめて重要になってくる。この外部地域との良好な関係を確保するうえでの第一要件は、グループホームの立地環境である。

具体的にいえば、グループホームが地域とつながり、地域に開かれているためには、グループホーム自体が地域のなかに立地してることが前提となるということである。

人里離れた山間や、住宅のない工場地帯などではグループホームは孤立した施設になりやすく、利用者も地域のなかに暮らしてるという実感をもてない」。


2019年04月06日

お花見も

きのう更新された国立感染症研究所のインフルエンザ流行レベルマップによると、インフルエンザ定点医療機関の2019年第13週(3月25日~31日)の定点当たり報告数は1.73(患者8567人)で、前週の報告数2.49よりかなり減りました。

全国で警報レベルを超えている保健所地域は1カ所(1県)、注意報レベルを超えているのは3カ所(3県)だけと、落ち着いてきました。

ねえちゃのグループホームも、一時はインフルエンザに罹ったかたが出て心配されましたが、スタッフの人たちの素早い対応で、広まることなく無事におさまり、お花見ができるまでになったようです。

それでも、外出には油断は禁物です。外出・外泊の際には――

*家に戻ったり帰宅時には、うがい・手洗いをする。
*食事前、トイレ後の手洗いは石鹸をつけ、30秒以上洗い、流水で流す。
*生ものは避け、加熱したものを食べる。
*家族に体調を崩した人が居る場合、外出・外泊を見合わせる。
*外出・外泊中に体調を崩したら医師に受診する。

といったグループホームからの「お願い」がありました。


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2019年04月05日

4月までの計画書

インフルエンザの影響で遅れていたのですが、きのうグループホームを訪ねたとき、4月分までの「介護サービス計画書」をチェックしました。

総合的な目標は、できることは続けながら、好きなことをして、張り合いのある生活を送れるようにする。

具体的な介護内容としては、

①体操・歩行(二往復)・レク・家事・作業など、できることには参加を促す

②日課でしていることを続けてもらう
・10時、血圧手帳をつける
・夕食後、日記をつける

③入浴日以外は夕食後にパンツ交換を促す

④起床後は、化粧品の使用を促す

と、これまでとあまり変わりはありません。日課でもう一つ続けていることに、寝る前に私のところに電話をすることがあります。

ときどき「電話の掛け方わかんなくなっちゃった」といいながらも、毎日ちゃんと忘れずに掛けてきます。

症状は少しずつ進んでいることは確かだと思いますが、いまのねえちゃはまずまず“幸せ”といっていいんじゃないかな、と自他ともに感じています。


harutoshura at 17:03|PermalinkComments(0)ねえちゃの近況 

2019年04月04日

選挙の春

ポカポカ陽気で晴れ渡った今日、久しぶりに、ねえちゃのグループホームへ面会に行きました。少しやせた感じがしますが、元気そうです。

長野市街は、選挙カーの声が賑やかで、ポスターの掲示板も見かけます。どうも、今月7日投票の県議会議員選挙まっただ中のようです。

「選挙どうする?」とねえちゃに聞くと、何が何だか分からないながらも、ほとんど欠かさずに続けてきた投票に意欲はありそうです。

というわけで、この冬ずっと控えていた、久しぶりの外出は、県議選の期日前投票、ということになりました。

自宅に届いていた投票所入場券をもって、郵便受けに入っていたビラの中から、まあ「この人かな」と思う人のを選んで持って、自宅近くの市役所の支所でなんとか投票を終えました。

あわただしい突然の外出で、やや歩くのがおぼつかないといった感はありましたが、連れ合いの仏壇の前で久しぶりに手を合わせることもできました。ねえちゃにとっても、いよいよ春到来です。


harutoshura at 23:24|PermalinkComments(0)ねえちゃの近況 

2019年04月03日

馴染んだ空間、環境を助けに

グループホームでの行事も、面会に来た人も、さっきの食事も、最近は、ねえちゃの頭にはほとんど残らず、すぐに消え去っていってしまいます。

それでも、子どものころの思い出や戦争体験など長期にさかのぼった記憶は、断片的にではあれ、明瞭に残されていて、しばしば、いま目にしているように詳しく話してくれます。

外山さんは、このように記憶を探り出して、手がかりにしながら日常生活行為を再構築していくことはできていて、この際も「過去に馴染んだ空間、環境が大きな助けになる」と考えていました。

一方で、こうした高齢者に対しては、言葉による問いかけによっていちいち記憶を試したりすることはストレスを倍加させることにもなりかねません。まったくの逆効果です。

うまく機能しなくなっている思考の代わりに、体に深く刻み込まれた生活習慣や記憶、たとえば古い記憶にとどめられた物や色、形、音楽、においなどを用いて、その記憶を呼び覚ますことが効果的だと外山さんはみていました。

だから、居住空間でも、共用空間でも、高齢者たちがかつて日常生活の中で長く馴染んできた建具や道具類、活発だった青壮年期に流行した家具やインテリア、世代文化を反映した絵や写真、道具などを、記憶を呼び覚ます“仕掛け”として配し、生活空間を構成することがきわめて有効となるのです。


2019年04月02日

空間の作法

食事、睡眠、排泄といった、私たちが日常的に行っている生活行為には「手続き性」があります。

食事をするとき、手順にしたがって調理し、器に盛り、食卓に並べ、感謝し、箸で口に運び、食べ終わって余韻を楽しみます。

老齢化に伴って心身機能が低下したり、まして認知症高齢者ともなると、そうした手続き性が抜け落ちていく傾向があります。

さらに、生活している空間の貧しさが、そのまま行動の貧しさへと直結していきます。

施設で廊下の行き止まりで排尿したり、ベッドからマットを引きずりおろしたりといった“問題行動”は、その高齢者に染みついた空間感覚をもとに、馴染めない環境に対してその人なりに対応しようとしていると理解することもできそうです。

そのようなとき、空間の中の仕掛けや、かつて馴染んだ道具が、生活行為の手続き性を回復していく手掛かりとなります。

日本の伝統的な住まいには「空間の作法」という文化があります。上り框(かまち)や床の間、座敷と襖の開閉、縁側の手水、囲炉裏など、生活行為と様式的にきっちり対応した空間の仕掛けが数多く存在します。

こうした要素を高齢者の施設の公私の空間に生かしていくことで、消えてしまった行為や動作へと誘導することができるようになるのです。

無気力で消極的になってしまった認知症高齢者を、指示や命令によらずに、ある生活行為に導いていくために、こうした生活空間の仕掛けを役に立てる。

こうした発想も、グループホームにふさわしい環境づくりのうえで重要だと外山さんは考えています。


2019年04月01日

警告を発するカナリア

かつて鉱山の坑夫たちは、危険を防ぐため、二酸化炭素や一酸化炭素に敏感に反応するカナリアを携えたといいます。

頭のなかで想定したり、応用したり、臨機応変に振る舞ったり、といったことができない認知症高齢者は、ある意味で、環境に対して非常に敏感な弱い存在といえるかもしれません。

とすれば、認知症高齢者に心身症的な問題行動が出るなら、かれらの日常生活の環境が劣悪であることを意味することになります。

カナリア

そうした生活環境は当然、認知症でない人にとっても良くない環境なのです。外山さんは「痴呆性高齢者の方々がカナリアになって、人間の劣悪な住環境に対する警告を発してくれていると考えるべきだ」といいます。

これまでノーマライゼーションというと、たとえば認知症高齢者や施設でケアを受けている人たちが、社会の中で普通の生活を送れるようにすることと理解されてきました。

しかし、外山さんは、認知症の人たちと接していて、いつのまにか癒されることに気づかされる体験を重ねていくにつれて、これとは異なる理解をもつようになったといいます。

外山さんは「今日、日本社会のなかの「普通」の人びとのほうが、アブノーマルなのである。痴呆性高齢者と接するなかから、むしろわれわれの側が癒され、ノーマライズされる。こういうことをノーマライゼーションと呼ぶべきなのではないか」と提起しています。


2019年03月31日

家族は「敵」に

在宅で、認知症初期の症状である繰り返される質問を無視したり、言葉による暴力をふるったり、といったことは、日常介護のストレス状態のなか、家族であるゆえに無意識にむしろ行なわれてしまいがちです。

親子や配偶者といった血縁・親族縁でがんじがらめになっているために、相対化できず、感情が煮詰まってしまい、非理性的な行為に走ってしまう。

介護するほうは、その行為に至るまでの経緯をしっかり覚えていて、激昂してしまったそれなりの理由もあります。しかし、介護される当事者にとっては、経緯はもう忘却の彼方です。

でも、殴られた痛みや、罵倒され傷ついた感情は澱のように残っている。外山さんは、こうした経緯の不明な傷が累積していくことによって、家族は「敵」になっていくのだといいます。

グループホームでは、血縁につながれない相手が、感情をひきずることなく認知症高齢者のありのままの姿を受け入れてくれます。外山さんは次のようにいいます。

「グループホームですっかり落ち着いた身内に接して、家族は自分たちが在宅でおこなっていた「介護」の中身と、家族であることの罪とに向き合わされるのである。

けっきょく家族が家族になるためには、そこで信頼関係が新たに結び直されねばならず、また新たに出会い直さなければならないのだ。というより、ここでようやく家族は、高齢者と向き合うことができるのだと思う」。


2019年03月30日

「垂直」から「水平」「横断」へ

大規模な施設での集団生活と比べて生活の単位が小さく、ひとりひとりの顔が見えるようになり、高齢者個々の持ち味や生活のペースがつかめてくると、表情は変わり人間関係も大きく変わります。

介護を「する側」と「受ける側」という切り割された固定的関係から、生活の再構築をしようとする高齢者を側面から支える関係へ、さらには、ともに暮らす仲間としての関係へと変化するのです。

そして、スタッフのかかわりかたが、
①プログラム主導側から個々の高齢者のペースに合わせたゆったりとしたリズムへ
②規則やルールずくめの管理的な姿勢から個別的な特性を受容できるゆとりある姿勢へ
③禁止や指導の言葉を乱発する指示的・教育的接近から、声を出さずにまなざしであたたかく見守り、危ないときだけ近づいてサポートする黙示的接近へ
と変わるとき、スタッフと高齢者の関係も確実に変化していくでしょう。

従来の施設における「垂直」の関係から、側面を支える「水平」の関係へと、そしてさらには適宜役割を変化させ交換しながらの「横断性」概念による人間関係の実現に向けて、関係が変化していくのです。

こうしたところにグループホームの本質があると考えられます。外山さんは「これはまさに、コミュニティの元としての人間関係そのものではないか。痴呆症にともなう生活障害をもつ高齢者の集住の場、ケアの現場から、個別の人間の共同の生活集団としてのコミュニティが立ち上がっているのである」と指摘してます。


2019年03月29日

住宅と施設の二重性

これまで見てきたような「在宅」と「施設」の両方のかかえる課題を乗り越える可能性を秘めた居住形態、ケア形態として登場してきたのが「グループホーム」でした。

住みなれた自宅ではないけれど、家庭的な雰囲気のなかで時間がゆっくりと流れ、専門のスタッフにさりげなく見守られながら認知症高齢者がひとりひとり、その人らしい生活をしていく。

こうした必要なケアを伴う生活を通して、認知症それ自体が治癒することはなくても、その進行を遅らせたり、随伴状態が改善された状態で暮らしていける。

グループホームには、①「住宅でもないし施設でもない」が、そこに期待されている役割からすると②「住宅でもあり施設でもある」という性格があります。施策者からすれば①を、利用者側からすれば②をもとめることになります。

ねえちゃのような入居している高齢者の側からすれば、まさに、住まいであるとともに、専門のスタッフが24時間常駐する施設でもあるのです。外山さんは、この「住宅と施設の二重性」にこそ、グループホームの可能性があると考えていました。